研究実績の概要 |
平成26年度は固体金属触媒を用いたフタル酸ジメチルの酸化的分子間C-H/C-Hホモカップリング反応を検討した。その結果、ジフェニルアミンからカルバゾールへの分子内C-H/C-Hホモカップリングで触媒活性を示した酸化ジルコニウム担持水酸化パラジウム触媒よりも、金属酸化物担持金ナノ粒子触媒の方が高い触媒活性を示した。中でも酸化コバルトが担体酸化物として最適であった。フタル酸ジメチルのカップリング反応により得られる二量体は3種の位置異性体が存在するが、パラジウム触媒では2,3,3',4'-位に置換基のついた非対称ビアリールが生成しやすいのに対し、金触媒では、耐熱性樹脂の原料として有用な3,3',4,4'-位に置換基のついた対称ビアリールが90%以上の選択率で生成することを見出した。更に酸化物担体について検討を行った結果、酸化ジルコニウムに金ナノ粒子を尿素均一沈殿法により担持させて、反応条件を最適化することにより、対称ビアリールの選択率は95%を維持したまま二量体収率を73%まで向上させることができた。 この反応を窒素雰囲気下で四酸化三コバルト担持金触媒を用いて行うと、反応後には三価のコバルトが二価に還元されており、易還元性の金属酸化物担体が金ナノ粒子の触媒反応に協同的に作用していることが明らかになった。更にin-situ XAFS測定より、反応中の金の価数は0価を維持していおり、三価の金錯体では反応中に0価の金に還元されることが明らかになった。このことから、本反応の触媒活性種は0価の金であると考えられる。 更にこの反応を重酢酸中で行うと、担持水酸化パラジウム触媒では生成物と回収原料中に重水素が取り込まれるのに対し、担持金触媒では生成物と回収原料中ともに重水素は取り込まれない結果になった。このことは、パラジウムではC-H結合の開裂が可逆的に進行するのに対し、金では不可逆に進行しており、反応機構が金属種によって異なることを明らかにした。
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