サンゴ再生足場材料として、生体適合性および生分解性に優れた蚕由来のシルクタンパク質を用いて、徐放制御型ドラッグデリバリーシステム(DDS)を構築することでサンゴの再生を目指し、シルクタンパク質を用いたシルクナノ粒子の形成と、そのシルクナノ粒子を含むシルクハイドロゲルの形成により粒子およびゲルからの二段階の徐放を可能にするサンゴ再生足場用DDSの作製を行なった。ハイドロゲルの高強度化を目指して、ペクチンに着目した。ペクチンは果実等の細胞壁に多く含まれている天然多糖類で、植物の基本構造を形成するための重要な成分の一つである。細胞壁内ではエクステンシンと呼ばれるペプチドとの物理架橋により複合体を形成することで強固な細胞壁を構築している。そこで、生体適合性及び生分解性に優れたBombyx mori 由来のシルクタンパク質をポリカチオンとし、ペクチンと相互作用させることで細胞壁を模倣した高強度なシルク由来のヒドロゲル構築を目指した。具体的には、シルクタンパク質を用いて調製したシルクヒドロゲルにペクチンを導入することでシルク-ペクチンネットワークヒドロゲルの形成を行った。その結果、ペクチンとシクルから成るハイドロゲルは、非常に高い圧縮強度と柔軟性を併せ持ち、基盤素材として非常に有望であることが明らかとなった。また、生分解性や生体適合を調べた結果、プロテアーゼもしくはペクチナーゼにより、酵素分解されると共に、動物細胞に対して特段の細胞毒性を示さないことが明らかとなった。以上の結果から、機械的特性、生物学的特性の両面から、シルクーペクチンハイドロゲルは、非常に有望な足場材料であると結論した。
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