研究課題/領域番号 |
25810113
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
高嶋 敏宏 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 助教 (60644937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸素発生触媒 / 人工光合成 / 電気化学 / 強相関電子系 |
研究概要 |
本研究ではユビキタス元素を用いた酸素発生触媒の開発に向けて、触媒を構成する第一周期遷移金属元素が示す電荷不均化特性の制御という新しい観点から触媒設計を行ってきた。その結果、リチウム電池電極材料や熱電変換材料のような今まで触媒としてはあまり検討される機会がなかった材料を酸素発生触媒として用いて、高活性な触媒が得られることを見出した。 具体的にはポリアニオン系マンガン化合物を用いて酸素発生触媒を作製し、その活性を電気化学的に評価したところ、反応の駆動のために必要な過電圧が中性条件下で150mV程度で済むことを明らかにした。通常同様な反応条件下でマンガン酸化物触媒を用いた時には600mV前後の過電圧を要することから、この結果は大幅な活性向上に成功したことを意味している。また、鉄酸化物を用いた酸素発生触媒の開発では分光電気化学的検討を行うことにより反応中間体を検出し、種々の検討からこの中間体の帰属について推定することができた。この中間体となる電子状態については電荷不均化反応を示し不安定であることから、これを制御する方法として固体物理学分野の知見を応用し、温度変化や異元素ドーピングなどの操作を施して結晶構造および構成する元素間での電子的相互作用を変化させたところ、それに応じて酸素発生活性を向上できることを見出した。これらのように第一周期遷移金属を利用した酸素発生触媒で中性条件下で高活性に働くものはほとんど報告がなく、今後人工光合成系の構築において貢献できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の計画に基づき、電荷不均化特性を制御した触媒として種々の酸素発生触媒を開発し、それらが従来の第一周期遷移金属酸化物触媒よりも高い活性を示すことを電気化学的評価から明らかにすることができた。しかし一方で、今年度に開発したこれらの触媒は想定していたよりも長期耐久性において課題があり、それを今後改善する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では今後、得られた知見を基に酸素発生触媒の開発を継続して進めていくと同時に、開発した触媒と光触媒を組み合わせることにより光反応系へと展開していく予定である。これにより、従来の材料系よりも可視光域の長波長の光を有効に利用できるようになるものと考えている。 また、これまでに検討した触媒構成金属の電荷不均化の傾向は、酸化反応として工業的に重要な一酸化炭素酸化反応などに用いられている触媒においても報告されている。したがって、現在までに開発した触媒をこれらの反応に応用した場合に高い活性を示すことを期待できることから、熱触媒的な検討も行っていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において酸素濃度測定マイクロセンサを購入する予定であったが、代表者の所属機関において所有している機器がその目的において代用可能であり、購入の必要がなくなったため。 次年度の研究計画内容を遂行するために必要な密閉型光反応容器および電気化学セルが高額であるため、これらの購入に充当し研究を計画以上に円滑に進めるために使用する予定である。
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