MoS2は水素生成のための助触媒として近年注目されているナノシート材料である。本研究では、これまで開発してきたTiO2メソ結晶とMoS2ナノシートを複合化させることで、光水素生成を目的とした新たな光エネルギー変換系の構築を行った。複合化の方法としては、MoS2ナノシートの凝集を避けるため、TiO2メソ結晶と合成したMoS2ナノシートを物理的に混合する方法を用いた。メソ結晶には、厚みの異なるTiO2メソ結晶を用いた。MoS2ナノシートはMoS2粉末をブチルリチウム溶液で攪拌し、化学的に剥離することで得た。MoS2ナノシートの水分散溶液にTiO2メソ結晶粉末を加え、乾燥させることで複合体を得た。本修飾法により、メソ結晶の外面を還元サイト、内部の細孔を酸化サイトと空間的に分離し、電荷再結合を抑制できると期待される。 FESEM像およびTEM像の観察から、TiO2メソ結晶の表面に積層したMoS2ナノシートを確認できた。紫外光照射下での光水素生成実験から、キューブ状のTiO2メソ結晶を用いた場合、シート状のものと比べ、高い光触媒活性が確認された。これは還元活性な{101}面がMoS2ナノシートとより接触しやすくなったことに起因すると考えられる。 TiO2メソ結晶とMoS2ナノシートの比率、焼結温度、超音波処理の有無、犠牲剤の濃度など構造や反応条件の最適化を行った結果、TiO2メソ結晶系はP25 TiO2ナノ粒子系と比べ、3倍以上高い活性を示すことがわかった。また、破砕したTiO2メソ結晶を用いて合成した複合体と比べた場合、6倍以上高い活性がみられた。これらの結果は、ナノ粒子を高次構造化することで、粒子間電子移動が高効率に起こり、光触媒活性が大幅に向上できる可能性を示している。フェムト秒レーザーを用いた時間分解拡散反射測定からもTiO2からMoS2ナノシートへの電子移動とナノ粒子系と比べ長寿命の電荷分離状態が確認できている。本研究成果は原著論文として発表した。
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