研究課題
有機半導体デバイスは環境負荷が小さい塗布プロセスで製造可能であり,機械的柔軟性といったユニークな特徴を持つため近年その社会的関心が集まっている.なかでも有機トランジスタの移動度が向上すれば,有機エレクトロニクスの市場も大規模に拡大する一方で,高い移動度と塗布プロセスに適合した化合物の溶解性,化学的かつ熱的安定性を兼ね揃えた半導体材料の開発が十分に進んでいない.研究代表者は,本研究にあたり分子軌道と集合体構造を同時に制御可能な分子骨格として「分子中央に硫黄元素を導入したW字型分子:DNT-W」に着目し研究を展開した.これまでの研究で明らかとしたDNT-Wの特徴的な点は分子の長軸方向に対して同位相の軌道が広がっているため,反結合性軌道の寄与を受けにくいことが挙げられる.そこで,このようなパイ電子系の材料を塗布プロセス可能とし,さらに集合体構造を同時に制御できれば,実用的な用途を満たす材料開発の基盤構築につながると考えた.はじめに,DNT-Wから直接位置選択的な官能基化が困難であるため,効率的な誘導体合成に向けた新たな合成法を開発した.鍵前駆体からクロスカップリング反応により様々な置換基を有する化合物を一挙に合成する事が可能となった.X線による単結晶構造解析を行ったところ,適切な位置にアルキル鎖を導入することによりコアのズレがない二次元伝導に理想的なヘリングボーン型の集合体構造を形成していることが明らかとなった.さらに,DNT-Wコアの中心間距離が置換基の導入により短くなり,トランスファー積分が増大していることが明らかとなった.そこで,溶液から高い配向性の結晶薄膜をエッジキャスト方により作成したところ,単分子レベルのステップが見えるほど平坦で高品質な単結晶薄膜が100μm以上で形成された.これに電極を蒸着しトランジスタを測定したところ,最高移動度10 cm2/Vsを達成した.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件)
Adv. Mater.
巻: 26 ページ: 4546-4551
DOI: 10.1002/adma.201400289
Chem. Commun.
巻: 50 ページ: 5342-5344
DOI: 10.1039/c3cc47577h