研究実績の概要 |
最終年度は、計画2の「ポリマー複合アニソトロピック分子ゲルの調製と評価」について重点的におこなった。ポリマーフィルムの作製においては、アントラセン誘導体に関しても新たに作製した。これらのフィルムの円偏光発光スペクトルを測定する事によって、円偏光二色性のみならず、円偏光発光特性を兼ね備えている事が明らかとなった。さらに、円偏光二色性と同じ様に、フィルムを熱処理する事によって、円偏光発光のシグナルが反転する事も明らかとなった。このような反転現象は、分子集合体を封入したポリマーフィルムにおいては、今までに例のない現象であり、学術論文において発表をおこなった(J. Mat. Chem. C, 2015)。また、フィルム中の分子集合体の評価技術として、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察技術を新たに確立し、フィルムの熱処理前後でのポリマー中の分子集合体の集積形態の変化を観察する事にも成功し、国内外での学会発表をおこなった。 計画3の「巨大円偏光を発現するポリマー・分子ゲル複合フィルムの作製と評価」については、これまでの結果をフィードバックした分子設計の見直しによって、より巨大な円偏光特性を発現させる事に成功した。この新しいピレン誘導体を導入したポリマーフィルムは、従来のピレン誘導体を導入したものに比べ、円偏光二色性を示す値(gAbs)で、8.3倍、発光の円偏度を示す値(gLum)で8.2倍という、大きな円偏光特性を示した。 本研究では、低分子集合体によって発現する特異的な機能を、ポリマーに付与し、当初の目的である巨大な円偏光特性の発現を達成することができた。さらに、熱処理によって右巻き、左巻きのシグナルを自在に制御する事が可能である事も見出し、光学フィルムのみではなく、メモリやセンサ等の応用の可能性も期待される。
|