研究課題/領域番号 |
25810126
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
伊田 翔平 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (80610740)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲル / ラジカル重合 / リビング重合 / RAFT / 刺激応答性 / アクリルアミド / クリックケミストリー / 架橋 |
研究概要 |
本研究は、高分子ゲルの網目構造の精密制御を目指した新たなゲル合成法として、「前架橋法」の確立に取り組んでいる。前架橋法では、低分子重合開始剤を高効率に架橋させることによって得た網目状開始剤を用いて、網目拡大重合を行うことによってゲルを得る方法である。今年度は前架橋法の確立に向け、1.「末端架橋による高効率架橋反応の探索」、2.「網目拡大重合に向けた前駆体化合物の合成とモデル反応の検討」を行い、以下の成果を得た。 1.前架橋法の実現には高効率な架橋反応の探索が必要であるため、末端架橋によるゲル合成を検討することによって、高効率架橋反応の探索を行った。具体的には、RAFT重合によって精密合成したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の末端にチオール基を定量的に導入し、4分岐アクリレートとのMichael付加反応によって検討した。反応条件を最適化することによりゲルが得られ、高効率な架橋反応が進行していることが示唆された。 2.2つのビニル基を有するトリチオカーボネート(TTC)型RAFT剤を合成した。この化合物は前架橋法における網目状開始剤の前駆体化合物である。前架橋法の検討にあたって、モデル反応としてこの化合物を用いたゲル合成を検討した。この化合物はRAFT重合を行うとき、開始剤および架橋剤として働き、モノマーがTTC部位に挿入する形で重合が進行し、2つのビニル基間が広がっていく。このため、本化合物は網目拡大重合のモデル化合物といえる。実際にゲル合成を検討したところ、通常の架橋剤を用いた時よりも架橋効率が向上することが明らかとなり、2つのビニル基間が拡大していることがゲル合成に有効に寄与していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAFT重合によるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の精密合成および末端架橋によるゲルの合成に成功し、高校率架橋反応の探索に一定の成果が出ている。また、網目拡大重合のモデル反応について、予想された効果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、末端架橋の探索を引き続き行い、前架橋法への応用可能性を探る。これとともに、RAFT重合を利用して網目構造の制御されたゲルを合成し、刺激応答能を評価することによって網目鎖の連鎖分布や組成の制御がゲルの性質に与える効果について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始当初、合成したゲルの力学物性測定のため、レオメーターの購入を検討し、予算を計上していた。しかし、他の共同研究を進行させている過程でレオメーターを使用できることとなり、2013年度中に購入する必要が失われた。そのため、次年度に予算を繰り越すこととなった。 上記共同研究の継続状況を見て、レオメーターの購入の検討を引き続き検討する。レオメーターの使用が今年度も引き続き可能であれば、RAFT重合によって合成したポリマーの解析に用いているGPCシステムが不具合を起こしているため、これの買い替えもしくは更新に用いる。その他、消耗品や旅費については当初の研究計画を元に進める。
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