本研究では、高分子ゲルの網目構造および機能の精密制御を目指した新たなゲル合成法として、「前架橋法」の確立に向けて取り組んできた。前架橋法とは、低分子重合開始剤を高効率に架橋させることによって得た網目状開始剤を用いて、RAFT機構を用いて網目拡大重合を行うことによってゲルを得る方法である。前架橋法の確立に向けて、高効率架橋反応の実現が重要であるため、前年度に続き「1. 末端架橋による高効率架橋反応の探索」を行った。さらに、前架橋法によるゲルの機能制御に向けた取り組みの前段階として、「2. RAFT重合を利用した2種モノマーが様々に配列したゲルの合成とその温度応答性」に関する研究を行い、以下の成果を得た。 1.前架橋法の実現には高効率な架橋反応の探索が必要であるため、末端架橋によるゲル合成を検討することによって、高効率架橋反応の探索を行った。具体的には、RAFT重合によって精密合成したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の末端にチオール基を定量的に導入し、4分岐アクリレートとのチオール-エン反応によって検討した。種々の条件でゲル化過程を観察し、効率的な架橋に必要な反応条件を明らかにした。 2.前架橋法を用いたゲルの網目構造制御およびゲルの機能制御に先駆け、RAFT重合を用いて構造の制御されたトリブロックポリマーを合成し、外側のブロックを架橋することによって得られるゲルの温度応答性について検討した。この結果、同じ組成であっても、前駆体となるブロックポリマーの構造が異なれば温度応答能が大きく異なることが明らかとなった。
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