研究課題/領域番号 |
25810127
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
堺井 亮介 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90507196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 共役系ポリマー / キラル / 超分子化学 / ポリジアセチレン / 蛍光分析 / キラルポリマー |
研究概要 |
本研究では、医薬品やエレクトロニクスなどの多岐にわたる産業および有機化学を初めとする幅広い学術分野において今日強く求められている「キラリティーの迅速分析」を達成する革新的手法を確立するために、蛍光性キラルポリマーの優れたキラル認識能と蛍光特性を活用し、「目視による迅速かつ高感度なキラル分析」を可能とする実用的高分子センサー材料を開発することを目的とした。具体的には、キラル認識部位を有する蛍光性キラルポリマーを精密合成し、キラル物質に対するポリマーの蛍光変化を詳細に評価した。特にキラル認識能や検出感度に焦点を絞り、得られた結果を分子設計にフィードバックすることで、センサーポリマーの最適構造を探索した。多種多様なセンサーポリマーを設計、合成し、ポリマー構造とキラル認識能の関係を調査することで、センサーポリマーの最適化を図った。この様な検討を通して、実際に、認識部位としてキラルアミノ基を有するポリジアセチレンが、光学活性カルボン酸のそれぞれのエナンチオマーに対し、異なる蛍光発光を示すことを見出した。これは、このポリマーを利用することで、カルボン酸やアミノ酸を含む様々な光学活性化合物のキラリティーを蛍光から目視で識別できることを意味している。従って、当該年度、本研究では、目的であるキラルセンサー材料に応用可能な基盤物質の創製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初達成を目指した、それぞれのエナンチマーに対して異なる蛍光発光を示す共役系キラルポリマーの合成に成功した。また、分子設計と色調変化の関係性が明らかになりつつあり、センサー材料の開発にとって有用な様々な知見が得られた。これらを基に、さらに有効なセンサー高分子の設計が可能となる。従って、本研究では当初の目的を十分に達成しており、計画通りの進展が達成されたと言える。また、これらの研究成果は複数の学会等で発表されており、関連分野の進展および領域の拡大に大きく貢献したものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度、光学活性カルボン酸やアミノ酸に対して異なる蛍光変化を示す共役系キラルポリマーの合成に成功した。今後の目標は、適用可能なキラル化合物の範囲を広げること、光学純度を蛍光分析できる明らかにすること、および最適構造の共役キラルポリマーから実際の使用条件を念頭に置いたキラルセンサー材料を創製することである。具体的には、酸・塩基相互作用や各種ホスト・ゲスト相互作用を利用し、分析可能な光学活性化合物の適用範囲を拡張する。この際、キラルレセプター部位を含むポリマー構造の設計が大変重要である。まずは、様々な分子設計を施したセンサーポリマーを合成、評価し、最適化を図る。また、実際の使用条件を念頭に置き、最適構造の共役系キラルポリマーからフィルムやゲルを含む固体状のセンサー材料を創製し、蛍光変化を評価する。最終的に、共役系キラルポリマーからなる固体状のセンサー材料が「目視による迅速かつ簡便なキラル分析」の手法として現実に利用できることを実験的に証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、目標とした蛍光性キラルポリマーの合成が非常に困難で、目的物を得るに至らなかった。そこで、何度か分子設計し直し、蛍光性キラルポリマーの合成を試みた。最終的には、そのようなポリマーの合成に成功したが、当該年度の多くの時間を費やすこととなった。従って、当初計上していた化学試薬や溶媒、実験器具等の消耗品を必要とすることがなくなったため、当該年度の支出額は当初のそれより少なくなった。 幸運にも最終的には目的とするポリマーの合成に成功したため、次年度は蛍光変化の評価、再設計等に力を注ぐ予定である。年度をまたいでしまったが、予定通り次の段階に進むことができるため、当初計上していた化学試薬や溶媒、実験器具等の消耗品を購入する必要が生じる。次年度では、今年度使用しなかった予算を使用し、それらの消耗品等を購入する予定である。また、実際の使用条件を念頭に置いたセンサー材料の創製は、当初より次年度で行う計画であったため、次年度に計上した予算は主にセンサー材料の創製に充てる予定である。
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