研究実績の概要 |
われわれは余剰C5留分の有効利用を考え研究を行ってきた.その結果,1,3-ペンタジエン(PD)の精密構造制御重合に成功した.得られたisotactic-cis-1,4-ポリPD(ICPPD)やisotactic-trans-1,4-ポリPD(ITPPD)はcis-1,4-ポリIPやtrans-1,4-ポリIPと同等の熱物性を有し,工業的に重要なPIP(ポリイソプレン)の代替材料になりうる. 一方,EPM・EPDM(エチレン-プロピレンゴム・エチレン-プロピレン-ジエンゴム)は,原油を蒸留・精製して得られるエチレンとプロピレンの共重合体であり,EPM・EPDMの用途は幅広いことで知られている.よって本研究では,資源の有効利用を考え,PDから合成したICPPD およびITPPDを用いてEPM・EPDMの合成,さらには官能基化EPM・EPDMの合成を検討した. ICPPDおよびITPPDについて,水素添加反応(水添反応)前後の13C NMRスペクトルを比較した.その結果,水添反応120時間後のICPPDまたは24時間後のITPPDではエチレン-プロピレン完全交互配列EPMが生成し,水添反応24時間後のICPPDまたは4時間後のITPPDでは,ICPPDあるいはITPPD由来の不飽和部位を有するEPDMが生成した.熱分析では,既製品EPM(エチレン含量52wt%)のTgが-59.6 ℃であったのに対し,本研究で合成したEPMのTgは-61.6 ℃を示した.以上の結果より,PPDから合成したEPMは,既製品EPM代替材料になりえることが明らかになった.さらに,mCPBAによる官能基化では,ICPPDあるいはITPPD由来の不飽和部位にエポキシ基が導入されていることを確認した.
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