研究概要 |
本年度は、(i)エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜に対するガンマ線前照射、(ii)スチレンおよびクロロメチルスチレン(CMS)モノマーの放射線グラフト重合(RIGP)、(iii)CMSユニットの塩素原子を起点としたスチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)モノマーの原子移動ラジカル重合(ATRP)、(iv)ETSSユニットの加水分解によるスルホン酸基の導入、という手順により、疎水性グラフト鎖(スチレンおよびCMSユニット)と親水性グラフト鎖(スチレンスルホン酸ユニット)を併せ持つ新規電解質膜を作製することに成功した。(ii)において、X線マイクロアナライザー(XMA)による元素分析の結果、RIGP後の膜内には塩素原子が均一に分布していることがわかり、スチレンとCMSが共グラフト重合されていることを明らかにした。(iii)において、反応温度を50 ℃という比較的低温にし、また触媒(臭化銅)と配位子(N,N,N',N'',N''-Pentamethyl-diethylenetriamine)の濃度を従来の約100倍に増大させることで、熱重合は生じずATRPのみが進行することを見出した。XMAによる元素分析の結果、ATRP後の膜内には硫黄原子が均一に分布していることがわかり、ATRPによってETSSグラフト鎖が均一に導入されたことを明らかにした。ATRPの反応時間を1~8 hと調節することで、ETSSのグラフト率を40~160%の広範囲で変えることができた。これにより、イオン交換容量0.67~2.8 meq/gの電解質膜を得られた。
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