研究課題/領域番号 |
25810134
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
折笠 有基 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (20589733)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 固体イオニクス / 燃料電池 / 電気化学 |
研究概要 |
大規模発電用の高効率発電デバイスとして注目されている固体酸化物形燃料電池においては、空気極おける過電圧が大きく、その向上が望まれている。そこで、空気極反応機構の解明を目的とした。空気極材料として、電子・イオン混合導電性材料であるLa1-xSrxCoO3-δ(LSC113)に焦点をあて、放射光を用いたその場計測X線吸収(XAS)手法を確立し、欠陥化学、電気化学、固体化学的観点から、作動条件下における、電極深さ方向の電子構造変化を評価した。その結果に基づき、混合導電性酸化物電極上での酸素還元反応機構の本質的解明と、それに基づく構造設計指針を導くことを最終的な目標とした。 薄膜モデル電極を用いて、その場深さ分解XAS測定を行い、律速過程は酸素還元反応における電極表面反応であり、酸素ポテンシャルの大きなギャップが気相/空気極界面で発生していることがわかった。空気極表面ではポテンシャルギャップを駆動力として、バルクと異なる空間電荷層が存在している可能性があり、ペロブスカイト酸化物中のSr濃度、点欠陥量に応じて、酸素表面反応係数、酸素空孔拡散係数が劇的に変化している可能性がある。この現象を解明するためには電極反応中の空気極最表面(気相/空気極界面)の評価が必要となる。 そこで、さらに表面敏感な評価が可能な、その場全反射XAS、蛍光X線分析(XRF)手法を適用した。これにより、電極最表面とバルクには、電子状態、組成分布に大きな違いがあることがわかった。具体的には電極最表面の領域でCoが極端に還元され、Srがenrichされていることが明らかとなった。以上のことよりLSC電極反応中において表面ではSrリッチなペロブスカイト相が生成していることが示され、これが界面のポテンシャルギャップの一因であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体・気体界面を固体酸化物形燃料電池作動条件下にて測定するための方法論を確立し、モデル電極を用いた測定に適用させてた。得られた結果はこれまで見られなかった電圧印加時の界面構造を捉えた初めてのケースであり、予定通りの進展である。
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今後の研究の推進方策 |
得られた界面情報から、反応を促進するための表面制御を行い、高性能固体/気体ヘ テロ界面の設計を進める。電極表面での組成変化が律速要因であることから、LaSrCoO4等の異なる組成を有する極薄膜をPLD 法にて被覆する。25年度で明らかにした律速過程の支配要因についての情報をベースにすることで、ヘテロ界面の基礎的な知見に沿った材料設計が可能となる。これらの表面被覆した電極を用いて、ヘテロ界面の構造情報をその場X線測定で計測し、再度材料設計へフィードバックする。以上から、高性能固体/気体ヘテロ界面の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に測定セル用部品を購入するために、物品費を削減したため。 翌年度分の額を測定セル用部品の購入に充てる。
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