大規模発電用の高効率発電デバイスとして注目されている固体酸化物形燃料電池(SOFC)の基礎研究を行った。SOFCにおいては、空気極おける過電圧が大きく、その向上が望まれている。空気極材料として、電子・イオン混合導電性材料であるLa1-xSrxCoO3-δ(LSC113)に焦点をあて、放射光を用いたその場計測X線吸収(XAS)手法を確立し、欠陥化学、電気化学、固体化学的観点から、作動条件下における、電極深さ方向の電子構造変化を評価した。その結果に基づき、混合導電性酸化物電極上での酸素還元反応機構の本質的解明と、それに基づく構造設計指針を確立した。 薄膜モデル電極を用いて、その場深さ分解XAS測定を行い、律速過程は酸素還元反応における電極表面反応であり、酸素ポテンシャルの大きなギャップが気相/空気極界面で発生していることがわかった。その場全反射XAS、蛍光X線分析(XRF)手法を適用した結果、電極最表面とバルクには、電子状態、組成分布に大きな違いがあることがわかった。具体的には電極最表面の領域でCoが極端に還元され、Srがenrichされていることが明らかとなった。以上のことよりLSC電極反応中において表面ではSrリッチなペロブスカイト相が生成していることが示され、これが界面のポテンシャルギャップの一因であると考えられる。この知見を基に、層状ペロブスカイト構造をもつRuddlesden−Popper ((La0.5Sr0.5)2CoO4±δ)をLSC113電極に積層させることで電極活性を向上させ、Srリッチになる現象を抑制することに成功した。本研究は高性能SOFC空気極の設計に対する重要な知見を与えるものである。
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