超伝導ダイヤモンドの特性を光化学反応を利用して制御することを目的として研究を遂行した。その際に、超伝導ダイヤモンドと光応答性物質との異種接合界面を形成することによって、超伝導特性と光応答性が協奏的に作用するようなシステムを構築した。 2015年度は、「超伝導ダイヤモンド」と「フォトクロミックなアゾベンゼン化合物」による無機-有機ヘテロ界面について検討を行った。2014年度に、このヘテロ界面における光照射に伴った可逆な臨界電流密度の変化を観測し、ACS Applied Materials & Interfaces 誌に論文が掲載された。2015年度はこの成果を発展させるため、上述の臨界電流密度の変化を定量的に議論することとした。具体的には、超伝導ダイヤモンド表面に固定化するアゾベンゼン化合物の密度を厳密に制御することを試みた。 Cu(I) を触媒とした Click 反応を利用したアゾベンゼン化合物の固定化において、Cu(I) の生成に還元剤ではなく、電解還元を用いることとした。特に、電解還元を適用することによって、 Cu(II) の還元に用いる電気量で触媒となる Cu(I) の生成量、つまりアゾベンゼン化合物の固定化量を制御できると考えた。実際にはモデル化合物としてフェロセン誘導体を用いて検討を行ったところ、当初のねらい通り、電解還元に用いる電気量に応じてフェロセン誘導体の固定化量を精度よく制御でき、分子修飾電極の作製において、Electro-Click 反応が非常に有用であることを示した。
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