研究課題
水素脆化メカニズムの解明に求められている局所的な水素量評価法の構築を目的として,本研究では水素侵入に伴って変化する材料特性に着眼し圧子押込み試験から得た結果と水素量を関連付け,その相関関係を明らかにした.以下に成果の詳細を記す。電解チャージにより水素を添加したオーステナイト系ステンレス鋼JIS SUS316Lにおいて,表面層の最大30%の顕著な硬化現象が発現し,この硬化現象は水素添加時の電流密度や添加時間に依存することが明らかとなった。すなわち硬化現象は水素量に対して依存するといえる。この硬化は圧子押込み時に圧子直下で新たに生成される転位と金属の結晶格子間内に固溶した水素との相互作用に起因する転位運動の阻止によるものであると考察できる。また,水素量と硬さ変化量(水素添加前後の押込み変位差)との間には相関係数0.98,無相関確率0.1%の強い相関関係があることを明らかにした。なお,本手法を用いる際には水素侵入に伴う内部応力の変化を考慮する必要がある。これは水素が侵入することで結晶格子が膨張し,それに対する反発力すなわち圧縮応力が生じるために,みかけ上,圧子押込み変位が減少するためである。本研究では内部応力と押込み変位が線形関係を持つことを考慮して補正した。本手法により,水素侵入層に対して二次元で走査的に押込み試験を行うことで水素の局所的な二次元分布を得ることが可能となった。これは亀裂先端や溶接部など水素脆化が顕著に生じる箇所の局所的な水素量を評価できることを示している。
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