研究概要 |
これまで、燃料電池および自動車用触媒などの様々な触媒について、特定した元素の性質に限定した理論研究を行ってきたが、実用触媒は、複数成分から成る合金や酸化物様々な元素が配合されて用いられる為、遷移金属全般に亘る普遍的な量子化学的性質の解釈が望まれている。しかし、様々な元素種を扱うほど、その混合物の中でどの成分が触媒性能に寄与し耐久性を支えているのか、という判断が難しくなってくる。3d, 4d, 5d遷移金属全ての凝集性に関する実験データ、理論計算データを統合して把握する事で、触媒開発時の指針に役立つ情報が一度に公開できる可能性がある。そこで、量子化学的性質を得る事に加え、既往の金属の凝集性に関する実験的研究成果と照合してみると、3d,4d,5d元素種の凝集性に関する諸物性について、共通した凝集性に関する量子化学的性質が見出された。3d, 4d, 5d遷移金属の金属間結合エネルギーを調べ、金属間結合エネルギーを算出したところ、d電子占有順に大きくなり、d電子が半分占有された元素で最大になり、d電子が全く占有されていないか、もしくは、全て占有された元素で最小になる事がわかった。この性質は3d, 4d, 5d遷移金属全般に通用する性質であった。なお、この性質は、自己拡散係数、凝集エネルギー、融点、拡散が開始するTamman温度に共通していた。なお、これほど基礎的で、且つ、実用触媒の性能の良し悪しの左右を決定できるデータであるにも関らず、既往の研究においても、3d、4d、5d占有軌道数の周期性と関連づけた量子化学的な見解として捉えられた事は無かった。 金属の凝集性に関る諸物性が互いに相似の関係にあり、その事を包括的に報告した例は存在せず、目下、電池・触媒における専門家から意見を募り論文化を進めている最中である。
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