2014年度は,前年度(2013年度)に確立した技術およびそこで得られた結果に基づき,マグネシウム(Mg)合金における微視構造と疲労強度との関係を詳細に調べた.特に,臨界せん断応力が他よりもきわめて低く,その作動が疲労破壊の原因となることが予想される底面すべりおよび双晶の2つの塑性変形機構に着目し,これらのシュミット因子が最小の0や最大の0.5にできるだけ近い値となるような試験を主として実施した. 試験結果より,底面すべり,双晶,一次錐面すべりの3つの変形機構が主として確認された.主たる作動機構と疲労寿命との関係において,底面すべりが作動した試験片は,双晶あるいは錐面すべりが作動した試験片よりも短寿命となることがわかった.後者の2つの比較においても有意な差が見られ,双晶が作動した試験片は錐面すべりが作動した試験片よりも短寿命であった.これらのことより,作動する変形機構は疲労強度に影響を及ぼし,このことが単結晶のマイクロ試験片における疲労試験結果のばらつきの大きな要因となることが明らかとなった.作動機構とシュミット因子との関係においては,底面すべりのシュミット因子が高い試験片では底面すべりが作動し,この値が比較的低く,双晶のシュミット因子の方が高い試験片では双晶あるいは錐面すべりのいずれかが作動した.後者の2つの作動はシュミット因子では区別できなかったが,主応力の方向に着目すると,これがhcp構造のc軸と平行に近い方向に作用する場合に双晶が,垂直に近い方向に作用する場合に錐面すべりが,それぞれ作動する傾向が見られた. また,上記とは別に実施した数cm程度の試験部寸法を持つバルク材の試験結果と比較すると,バルク材を用いた上記のマイクロ試験と同様のR=0の片振り試験では二重双晶からのみ疲労き裂が発生する結果が得られ,超小型の単結晶材とバルクの他結晶材とで異なる特性が見られた.
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