研究課題/領域番号 |
25820007
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
宍戸 信之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00570235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局所変形 / 界面強度 / 材料微視構造 / 結晶塑性 / ナノ・マイクロシステム |
研究概要 |
半導体およびMEMSデバイス開発における極端な小型化・高密度化は、従前の機械的信頼性設計手法では予測不能な破壊事例を生じさせる。このような極微細な構造物の場合、その構造寸法と材料の微視組織の寸法に匹敵するようになっているため、微視組織に対応した局所的な強度変動が構造の破壊に直結する可能性が示唆されている。したがって、既存のマクロな評価に基づく強度情報からは脱却し、局所的な強度情報を扱うことが、微細な構造を有する構造物設計における信頼性向上の鍵となる。本研究では、そのような破壊の起点となる異種材界面の局所強度変動について、支配的な一因子と推察される金属結晶粒構造の変形に関して実測に基づく評価を行い、界面強度分布を規定する諸量の探索を目指して研究を進めている。 初年度である平成25年度は、評価用試料としてデバイス配線構造を模擬した積層構造体を作製した。また、材料微視組織だけでなく界面強度の異なる構造体の作製も成膜プロセス条件の制御によって成功した。それと平行して、小型機械試験機を装荷した電子顕微鏡装置を用いて、機械試験時の微小構造体における局所変形場が評価可能な実験系を構築した。単結晶からなる積層構造体からイオンビーム加工により試験用サンプルを切出し、その破壊試験を構築した評価システムで実施することで、剥離試験中での結晶方位分布のその場観察に成功した。変形前後の結晶方位情報から導かれた変形場は、数値シミュレーションの結果と定性的には一致しており、構築した評価システムの有効性を示すものであった。今後は本システムを活用してデータの蓄積および解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、局所界面強度の変動について、その支配的な因子と推察される金属結晶粒構造に関して実験に基づく評価を行い、界面強度分布を規定する諸量の探索を目指している。界面結合エネルギーおよび塑性散逸エネルギーとそれらの和とされる界面じん性値をそれぞれ実験的に評価し、結晶粒構造との関係を明らかにするためには、剥離試験時におけるき裂近傍のひずみ場が計測可能な実験スキームの構築が不可欠である。 計画初年度である平成25年度には、電子線後方散乱回折(EBSD)像用カメラを含むFIB-SEM複合ビーム装置に対応型ナノインデンタを装荷した評価システムを基幹として、平滑な自由表面を側面に有する剥離試験用の評価試料を作製することで、剥離試験中にき裂近傍のEBSD像を取得しながら剥離試験を行うことを可能とした。変形前後に得られたEBSD像から算出された変形場は、結晶塑性を考慮した有限要素解析から得られた変形場と定性的に一致しており、構築した評価手法が正しく機能していることが確認できた。評価手法の構築およびデモデータの取得を初年度内に達成できたことから、次年度以降はそれを用いたデータ蓄積および解析に集中することで、当初計画通り、強度と局所構造との相関解明を目指すことが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
計画の最終年度にあたる平成26年度には、構築した評価手法を用いて、まず銅単結晶/窒化硅素界面を有する構造での界面結合エネルギーおよび塑性散逸エネルギーとそれらからなる界面じん性値を評価し、構築した手法の再現性および信頼性を検討する。さらに、寸法の異なる試験片を対象とすることで、塑性変形挙動が統計的に揺らぐ挙動を確認し、その分布の定量評価を行う。 また、結晶粒界を含む系を対象として、メッキにより成膜された多結晶銅薄膜を基材とした配線構造体における局所界面付着強度の評価を行う。前年度で得られた各銅結晶方位での界面結合エネルギーをリファレンスとし、粒界の存在による界面エネルギーの変動を評価するとともに、塑性変形挙動および塑性散逸エネルギーの変化も検討する。さらに、配線構造の局所強度低下を誘引する諸量の探索を行い、得られた統計的な強度データを元に、同一構造体中での局所強度分布の推定を試みる。いずれも積層構造体はすでに前年度に作製済みであり、本年度はサンプル加工とその評価を実施するのみである。また本年度は、得られた試験/観察結果を解析する計算機設備へ重点的に投資し、解析の高速化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、積層構造体の作製プロセスをファウンドリへの外部委託を予定していたが、東北大学ナノテク融合技術支援センターを利用することで省コスト化に成功した。その一方で、イオンビーム加工による試験片作製ノウハウの取得に時間を要したため、実験データ取得が当初計画より遅れ、初年度での計算機導入を見送る形となった。 初年度予定していた計算機購入費を、次年度に予定していた同じく計算機購入費用と合算してより高性能の設備を導入し、前年度の解析作業の遅れをキャッチアップする。
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