研究課題
微小デバイスの開発における極端な小型化・高密度化は、従前の機械的信頼性設計手法では予測不能な破壊事例を生じさせる。このような極微細な構造物の場合、その構造寸法が材料微視組織の寸法に匹敵するようになっているため、微視組織に起因する局所的な強度の変動が構造の破壊に直結する可能性が示唆される。したがって、既存のマクロな評価に基づく強度情報からは脱却し、局所的な強度情報を扱うことが、微細な構造を有する構造物設計における信頼性向上の鍵となる。本研究では、そのような破壊の起点となる異種材界面の局所強度変動について、支配的な一因子と推察される金属結晶粒構造の局所変形の評価を行い、界面強度分布を規定する諸量の探索を目指して研究を進めた。まず、評価用試料としてデバイス配線構造を模擬した積層構造体を作製した。また、小型機械試験機を装荷した電子顕微鏡装置を用いて、機械試験時の微小構造体における局所変形場が評価可能な実験システムを構築した。作製した積層構造体からイオンビーム加工により試験用サンプルを切出し、その破壊試験を構築した評価システムで行うことで、剥離試験中での結晶方位分布のその場観察に成功した。変形前後の結晶方位情報から導かれた変形場は、数値シミュレーションの結果と定性的に一致しており、構築した評価システムの有効性を示すものであった。単結晶からなる積層構造体の剥離試験において、異なる荷重方向で得られた変形および強度が結晶塑性に起因する塑性変形の難易との相関性を示す結果を得た。一方で、同一方向での評価結果はほぼ一定の強度を示したことから、局所強度変動は微小変形における統計的な揺らぎよりもむしろ、結晶粒構造に応じた塑性変形の異方性による見かけの強度変動であることを明らかにした。
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