平成25年度では金属/酸化物ヘテロ界面としてAg/MgO(100)界面を解析したが,平成26年度ではミスフィットの大きいCu/MgO(100)界面を考え,Ag/MgO(100)界面と同様に,コヒーレント界面モデルを用いて第一原理計算による剥離変形とすべり変形に対するエネルギー変化と界面原子間力を解析した.Cu原子が酸素原子直上に配位する場合とMg原子直上に配位する場合に対して得られたデータを原子間ポテンシャルによってフィッティングし,この原子間ポテンシャルを用いてCuとMgOのミスフィットを考慮したインコヒーレント界面に対する解析を行った.以前の第一原理計算の結果と一致して,鏡像電荷による界面相互作用を生じるCu-Mg界面結合に関して,コヒーレント界面モデルの挙動を反映した原子間ポテンシャルはインコヒーレント界面に対して精度が悪いことがわかった. 作成した界面原子間ポテンシャルを用いて界面き裂の進展の分子動力学シミュレーションを実行した.Ag/MgO(100)界面およびCu/MgO(100)界面の両方に対して共有結合性の強いAg-OおよびCu-O界面相互作用のために界面に沿ったへき開破壊は生じず,界面近傍の金属側にき裂が進展した.そこでは,界面のためにき裂からの転位の射出が抑制され,それぞれの金属母相中のき裂進展に比べて荷重は低く破壊靱性が低いことが明らかになった.Cu/MgO(100)インコヒーレント界面に関しては不均一な界面結合状態・界面原子配列のため,き裂が界面から離れて進展し破面のラフネスが大きいことがわかった.これらの結果は界面結合そのものの強度だけではなく界面近傍でのき裂の進展挙動の理解がヘテロ界面の強度評価に不可欠であることを示している.
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