研究課題/領域番号 |
25820011
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
亀尾 佳貴 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60611431)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨 / 骨細胞 / リモデリング / マルチスケール解析 / バイオメカニクス |
研究概要 |
本研究では,骨リモデリング過程における骨細胞の力学刺激感知機構を明らかにするため,微視的な高分子構造から巨視的な骨基質の材料特性までを考慮したマルチスケールな力学解析を通じ,骨細管内の間質液流れにより骨細胞に付与される力学刺激の定量的評価を目指している.本年度は,繰返し荷重下における骨梁内部の間質液流体圧を理論的に解析するとともに,流体圧勾配により骨細管内に生じる間質液の流れ場と,それにともなう骨細胞突起の変形挙動についてシミュレーションによる検討を行った.以下に,本年度中の主な研究実施内容と,得られた成果をまとめる. 1.層板構造を有する骨梁内部における間質液流体圧の多孔質弾性解析 海綿骨の微視構造要素である骨梁は,発達した層板構造を有する多孔質体であり,生体内において歩行運動や姿勢維持等に起因する繰返し荷重を受けている.そこで,単体骨梁を各層で透水係数が異なる二次元多層多孔質弾性体としてモデル化し,繰返し荷重下における間質液の流体圧分布を理論的に解析した.その結果,荷重周波数が一定であれば,骨梁内部に比べ骨梁表面の透水係数値が小さい場合の方が,より顕著な流体圧勾配が発生することが示された. 2.骨細管のイメージベースモデルを用いた骨細胞突起変形シミュレーション 超高圧電子顕微鏡観察に基づき,骨細胞突起を含む骨細管のイメージベースモデルを作成した.骨細管内の細胞周囲マトリックスを考慮し,格子ボルツマン法と骨細胞膜の粗視化粒子モデルとを組み合わせた流体構造連成解析を行うことにより,骨細管内における間質液の流れと,それにともなう骨細胞突起の変形挙動を解析した.その結果,骨細管壁の微視的な凹凸により発生した不均質な流れ場により,骨細胞突起に複雑なひずみ分布が確認された.また,細胞周囲マトリックスが密に分布するほど,間質液の流れ,および,細胞突起の変形は,抑制されることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載の通り,骨基質の層板構造が間質液の流体圧に及ぼす影響の検討,および,骨細管内における間質液流れ場の定量的評価を行ったことに加え,これまでの研究で構築した細胞膜モデルを適用することにより,間質液流れにともなう骨細胞突起の基本的な変形挙動を解析できたことから,本研究は,おおむね順調に進展しているものと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
骨細管内における糖タンパク質等の細胞周囲マトリックスは,間質液の流れに対する抵抗として作用するとともに,間質液の流れを力学刺激として骨細胞内に伝達する役割を持つ可能性も指摘されている.そこで,代表的な細胞外糖タンパク質であるプロテオグリカンを対象として,その周囲を透過する間質液の流れを分子動力学法により解析し,得られた流速分布を基に,間質液を連続体とみなし得る空間スケールにおいて,糖タンパク質間を透過する流体が従う支配方程式を導出する.さらに,間質液の流れによりプロテオグリカンに作用する力と変形から,細胞膜を介して骨細胞に伝達される力学刺激量を定量的に評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の遂行に際し,研究補助員を雇用する必要が生じなかったため. 研究補助員の増員,または,研究成果を国際学術誌に投稿する際の英文校閲に使用することを計画している.
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