研究課題/領域番号 |
25820014
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
池永 訓昭 金沢工業大学, 工学部, 講師 (30512371)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耐熱性DLC薄膜 / 金属添加DLC薄膜 / 微細構造 |
研究概要 |
本研究は650℃以上の高温環境下でも従来の特性を損なうことなく使用できるDLC膜を実現すること,およびそれを可能にするメカニズムの解明を目的としている.Siを添加したDLC膜によって耐熱性改善の可能があることは予備実験で確認していたが,Si濃度と耐熱性改善の関係が明らかになっていなかった.そこで,当該年度は種々の濃度に調整したSi添加DLC膜を作製し,400℃,600℃,800℃の環境下で30分間保持して熱処理を行なった後の摩擦係数と膜硬度を測定した.その結果,各熱処理温度において摩擦係数が劣化しないSi添加DLC膜の再現を確認した.また,熱処理温度が高くなるにつれて摩擦係数が劣化しないSi濃度範囲は狭くなり,800℃の熱処理の場合においてはあるSi濃度においてのみ低い摩擦係数を示すことを明らかにした.一方で,膜硬度に関しても摩擦係数と同様に膜硬度が劣化しないSi濃度は熱処理温度によって異なることがわかった.しかし,高温(800℃)の熱処理の場合はほとんどの膜で膜硬度が半分以下に低下することが今回初めて明らかとなった.耐熱性の改善が確認できたSi添加DLC膜の微細構造をラマン分析とTEM観察で評価することを当初予定していたが,ラマン分析装置の不調のため,当該年度はTEM試料の作製条件を選定するまでを行ない,具体的な評価・観察は次年度の初期に行なう. 次年度に取り組むスパッタリングとプラズマイオン注入成膜の複合装置を製作するためのパルス電源の設計・製作・導入までを当該年度中に完了し,次年度導入するマグネトロンスパッタ源と組み合わせることで,成膜条件のより広範囲な調整が可能となる.これによってより制御された試料を作製し,耐熱性改善のメカニズムの解明につながる知見を得る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Si添加に伴う耐熱性改善の再現性を確認する目的で,初年度は種々の濃度に調整したSi添加DLC薄膜を作製し,種々の温度で熱処理した後の摩擦係数と膜硬度を測定した.その結果800℃でも低い摩擦係数を示すSi添加DLC膜が存在することを確認できたことで,本研究課題の主たる目的である650℃以上でも使用できるDLC膜の創製にめどをつけるに至った.一方で,熱処理に伴って膜硬度が低下する現象を確認できたことは新しく得られた知見ではあるが,本研究課題で目的としている「従来のDLC膜の機能性を損なうことなく耐熱性を改善する」に対しては改善の必要がある.これを改善するためにも膜の微細構造を評価・分析することで,耐熱性改善のメカニズムを明らかにする必要がある.現段階では評価設備の不具合もあり,メカニズムの解明において若干遅れていると認識している.遅れの主要因となっていた評価設備は別途評価できる機関の手配を完了したため,次年度初期に評価を完了する予定である.他方,デュアルプラズマを用いた成膜プロセスを開発することも本研究の課題の一つにしており,次年度の完成を目指している.初年度予定していた電源部の導入は完了し,次年度導入予定のマグネトロンスパッタ源の選定が順調に完了したことから,予定よりも若干進んでいる状況と認識している. 評価に関しては若干遅れており,装置開発に関しては若干進んでいる現状を鑑み,総じて本研究は順調に遂行していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において初年度に実施すべき一部の評価が実施できない問題は発生したものの,次年度の初期に完了できるめどがついている.従って次年度は耐熱性が確認された試料の評価を中心に研究を遂行し,耐熱性改善のメカニズムの解明に関する知見を得ることを第1目標とする.また,本年度明らかとなった,熱処理による膜硬度の低下に関しては改善を要するものの,耐熱性改善のメカニズムの解明に伴う評価結果と密接に関係していることが予想されるため,評価結果を成膜条件にフィードバックすることで改善を図る予定である. 新しいプロセス装置の開発については,一部計画を前倒しできた項目もあるため,装置の完成としては若干早まると考えている.プロセス装置としては前述のメカニズムの解明と合わせて調整を行なう必要があることと,デュアルプラズマの評価を行なう必要があるため,次年度後半の完成を予定している. 研究全体としてはおおよそ当初予定通りに遂行できるものと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度導入したパルス電源の仕様を,得られた実験結果を基に必要最小限の内容に絞り込むことができたため,当初予定額よりも安価で製作が可能となった.また,外部機関に分析依頼を予定していたラマン分析が装置不調のため実施できなかったため,これに関わる消耗品・治具などの購入が先送りになったため次年度使用額が生じた. 次年度導入を予定していたマグネトロンスパッタリング源はアメリカ製の製品を考えている.為替の影響で申請当時よりも価格が上昇しているため,当初予定額よりも高額になることが予想されるが,パルス電源の仕様変更で生じた次年度使用額をこれにあてる.また,ラマン分析は当初計画していた内容で次年度に実施する.消耗品等は計画通り実施する予定である.
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