研究課題/領域番号 |
25820015
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
倉橋 貴彦 長岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00467945)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シミュレーション工学 / 材料力学 / 有限要素法 |
研究概要 |
H25年度では,SS400と天然ゴムの接着接合体のはく離試験,および応力解析を行うために,解析プログラムの構築を行った.はく離試験では,2枚のSS400材により天然ゴムを挟み接着した継手の形をした試験片に引張荷重を作用し,継手の長手方向の接着長さを変えた3つのモデルに対してはく離の様子の観察,およびはく離荷重を求めた.また,応力解析に用いる支配方程式としては,つり合い方程式,応力-ひずみ関係式およびグリーンのひずみの定義式を適用した.グリーンのひずみには変位勾配の積により表される項を含むため,変形量の大きな材料の形が変わる様子を適切に再現することができるという利点がある.また,本研究では,接合界面における破壊に焦点を当てているため,接合界面端における応力集中部の応力場を少ないメッシュの条件に対しても適切に計算が行えるようにAkinにより提案された特異要素を用いた有限要素法により解析を行うことにした.以上に示した支配方程式に対して有限要素法に基づく離散化を行い,特異点を含む要素には特異要素における補間関数,またそれ以外を通常の補間関数を適用することにした.解析モデルとしては,はく離試験時における継手構造の接合体を対象とし,対称部分を除いた1/2モデルに対して有限要素メッシュによる分割を行った.また,応力解析においては,支配方程式を離散化した有限要素方程式内に非線形項が含まれるため,荷重ステップごとの解析を行うことにした.結果として,数ステップ荷重段階を追った解析を行うことに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SS400と接着材の界面上,あるいは天然ゴムと接着材の界面上においてはく離をするか,各モデルに対して5種類の試験片を作成しはく離試験を行ったところ,両ケースの結果が得られた.この原因を追求するために,構築したプログラムに試験片のモデルに対するメッシュを作成し,応力解析による検討を行った.結果として,作用する荷重が第一ステップの場合における各界面端における全ての応力成分に対して図化したところ,界面に対して垂直となる方向の応力成分による破壊が生じている(せん断でなく引張りにより破壊している)と考えられ,またはく離試験において得られた破壊の起点と解析結果により大きな応力を示した箇所は一致する結果となった.SS400と接着材の界面上,あるいは天然ゴムと接着材の界面上におけるはく離については,解析結果からは若干の応力の値に差はあるものの,両界面端における応力の値は1~2割程度しか差がないため,実験モデルの作成時の微妙な形状等によってははく離が生じる界面端の位置はモデルによって異なるものと考えられる.このような結果も踏まえ,今後は荷重ステップごとの応力解析および,特異応力場の評価に対して成果の向上を目指し研究を行う予定である.また,三次元異材接合モデルに対する検討として線形弾性体による接合構造に関する特異応力場の解析を行い,特異要素の有無による解析結果の違い等についても考察を行った.メッシュが粗い場合,特異要素を用いた場合は,通常の要素の場合に比べて大きな値を示し,また特異場における応力分布は,特異性のオーダに従う分布に近くなることがわかった.三次元異材接合モデルに対する特異要素の効果について,検討結果を整理し日本機械学会論文集に投稿したところ,出版されるに至った.
|
今後の研究の推進方策 |
荷重ステップごとに解析を行うため,各ステップにおける変形量に応じて,メッシュの節点位置を更新する必要がある.はく離試験モデルに対する解析では,数ステップ解析が進んだ後,メッシュが潰れることにより計算が破綻することがある.このような問題を回避するため,一般に,適応型のメッシュ再構築法や,メッシュの補間次数を変える方法,また周囲の節点の分布から対象とする節点の位置を決める方法等がある.これらの方法についても検討をし,今後は要素の再構築法に焦点をおき,プログラムの改良を行う予定である.また,メッシュの再構築が適切に行えるようになった場合,次に荷重段階ごとの特異性のオーダや特異応力場の強さを考える必要がある。特異応力場の強さの単位は,距離の指数乗(指数の値は特異性のオーダ)と応力の単位により表されるため,接合材料の組み合わせ,接合端部の形状,また外力の大きさに依存しない形で単位を表されることが望ましい.そこで,応力特異場の強さを物体の代表長さと外力の値を使用し,特異応力場の強さを無次元化することを試みる.また,シミュレーションによる結果を適切に整理できた後,シミュレーション結果と実験結果の関係について考察を行うため,無次元化された特異揚力場の強さとはく離荷重の関係を整理する予定である.
|