研究課題/領域番号 |
25820022
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡田 将人 金沢大学, 機械工学系, 助教 (60369973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面改質 / 表面粗さ改善 / バニシング加工 / ダイヤモンド |
研究概要 |
今年度は年度当初の研究実施計画の通り,球頭形状のダイヤモンドチップをバニシング工具として用いた.工作物には加工後の表面層の金属組織の変化を容易に観察可能ためにステンレス鋼SUS316を用いた.加工機には,空間5自由度を有するパラレルメカニズムロボットを用いた. 第一に基礎的な加工特性を把握するために,平面に対するバニシング加工を行い,加工中の加工力ならびに加工後の表面特性について検討した.その結果,ダイヤモンドチップによるバニシング加工では非常に平滑な仕上げ面(本実験ではRaで0.1ミクロン以下)が得られた.また,加工後表面層の金属組織は数十ミクロンの領域で微細化されており,表面層の断面硬度を測定したところ,表面層から材料内部に向かうに伴い,硬さが母材硬さに徐々に減少する傾向が得られた.このことから,バニシング加工で良好な仕上げ面粗さと表面の改質効果が同時に期待できることが判明した. 次に,曲面への応用として一定曲率の凹面を対象としたバニシング加工について検討した.工具,工作物等の実験条件は前述の平面への加工の場合と同一とした.曲面への加工の際は,加工点の接線方向に対し法線方向の加工力成分が常に一定になるように工具経路を制御した.その結果,凹曲面においても平面の場合と同様に良好な表面性状の仕上げ面が得られることを明らかにした.これらのことから,本加工法はNC工作機械で実現可能な曲面処理法として期待できるといえる. さらに,より良好な表面粗さならびに改質層特性を実現すべく,ダイヤモンドチップを回転させる機構をパラレルメカニズムロボットに付加した.回転機構にはエアスピンドルを用いた.現在は工具を対象面に対し傾斜させ回転させながらの加工が可能な状態にまで至っている.しかしながら,工具振れ回りによる表面粗さへの悪影響が認められ,この対策を検討しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではバニシング加工と仕上げ切削加工により,自由曲面を有する加工対象物に対し,良好な表面性状と表面改質層の両者の獲得が可能な加工法の開発を目的としている.研究実績の概要で述べたように現時点までに,対象形状が平面ならびに曲面にかかわらずダイヤモンドバニシング工具を用いることで,仕上げ切削工程の省略が期待できる程度の表面粗さが実現できることを明らかにした.加えて,それらの加工表面層の金属組織は微細化されており硬度の上昇も認められ,改質層も得られていることも明らかにできた.これらのことから,当初の計画以上に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初の予定では,バニシング加工は加工対象の表面層に改質層を生成することに特化した工程として位置付けており,良好な表面性状を得るために,バニシング加工後の対象面に追加工として仕上げ切削を施す計画であった.しかしながら,バニシング工具としてダイヤモンドチップを用いることで,仕上げ切削で期待できる表面粗さよりも良好な粗さが得られることが明らかとなった.そのため,バニシング加工のみで良好な表面性状と加工変質層の獲得が可能であるかの検討を中心に行っていく. 今後は,ダイヤモンド工具を回転させて加工対象面との摺動距離を増加させることで,より良好な表面性状と改質層の生成を目指した加工法について検討する.現時点で,工具回転による振れ回りの影響が認められるため,これを抑制可能な工具の芯出し方法を検討する.最終的に回転工具によるバニシング加工を自由曲面に適用し,基本的な加工特性ならびに良好な加工結果が期待できる加工条件の提示を目指す.
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