最終年度である今年度は,工具回転による工作物の仕上げ面粗さ,仕上げ面表面層の硬さ分布と金属組織形態を明らかにするとともに,これまで対象としていたステンレス鋼に加え,より高硬度な焼き入れ鋼に対する効果についても検討した.加えて,工具走査に伴い定力制御すべき方向成分が変化する曲面に対して,本加工法を適用した.今年度得られた成果を下記する. 工具を回転させながらバニシング加工することで,回転させていない場合に比べ,同一条件下でも,より高い対象表面層の材料流動を生じさせることが可能なことを明らかにした.また,金属組織形態に大きな違いは認められないものの,表面に極近い部分で,明確な材料硬さの増加が認められた.加えて,より表面性状の改善が困難となる高硬度焼き入れ鋼を対象とした実験において,工具回転により得られた仕上げ面の表面形状は,工具を回転させない場合のそれより,平滑な形状を呈することを明らかにした.このことから,工具回転により,より効率的で効果的なバニシング加工が可能となることを明らかにした. 加工機にパラレルメカニズムを用いて,自由曲面に対しても工具押付力の加工点法線方向成分を一定とできる制御システムを構築した.曲面の実加工により,平面加工と同様に表面性状が改善することを確認し,対象面形状に関わらず,本加工法が有用であることを明らかにした. 本研究計画では,表面改質を目的とするバニシング加工と表面性状の改善を目的とする仕上げ切削加工を別工程とする計画から始めたが,良好な表面性状を有するダイヤ工具を用いることで,その両者の目的をバニシング加工のみで得られることが判明し,バニシング加工のみの加工特性に焦点を当てた.定力制御が可能なパラレルメカニズムを加工機として用い,回転工具により定力制御下でバニシング加工を施すことで,曲面においても良好な仕上げ面性状が得られることを明らかにした.
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