研究課題/領域番号 |
25820023
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
吉川 泰晴 岐阜大学, 工学部, 助教 (20550544)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 摩擦法則 / ドライ加工 |
研究概要 |
塑性加工における摩擦法則は,クーロン則と摩擦せん断応力一定則の2つが一般的に用いられている.しかし,現時点において真実接触部における摩擦法則は明確でないと考える. 有限要素解析を用いて真実接触部における摩擦法則を変更し,平均摩擦せん断応力(みかけの摩擦応力)と平均接触圧力との関係を算出した.この解析結果によれば,被加工材全体の塑性変形が始まると,真実接触部の割合(接触率)が急増し,真実接触部における摩擦法則がクーロン則であれば平均摩擦せん断応力と平均接触圧力は比例関係にあり,摩擦せん断応力一定則であれば平均摩擦せん断応力が急増する. 上記の解析結果を利用して実験的に検証するため,従来の手動制御よりも高精度に動作できるように摩擦試験機を自動制御化し,突起付き試験片の摩擦試験を実施した.試験片材料はSPCCとA1050-H24とし,工具表面にはVCおよびDLCコーティングして無潤滑下で摩擦した. 摩擦試験の結果,摩擦試験は試験条件が同じであれば,同一直線上にプロットされ,本摩擦試験の再現性の高いことを確認した.VC工具では摩擦応力が急増したが,詳細な表面観察により,工具表面にわずかなミクロ凝着が観察された.一方,DLC工具では凝着は観察されず,摩擦応力は急増しなかった.これらの結果から,ミクロ凝着がわずかであっても,摩擦応力が急増することが明らかになった.また,試験片の工具と接触して平坦になった部分(平坦部)の割合(平坦化率)はバルク変形が始まるとともに急増したが,摩擦応力は急増せず,見かけ上も平坦部もクーロン則に従うことが明らかになった. さらに高面圧での摩擦試験を行った結果,非常に高面圧では面圧によらず摩擦応力がほぼ一定となる知見が得られ,低面圧から高面圧までに対応できる新しい摩擦法則を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,被加工材の側方応力を考慮した詳細な摩擦実験と解析を行い,摩擦せん断応力が急増する新しい摩擦現象の発生条件とその発生機構を明らかにすることを目的としている.平成25年度は摩擦試験機を自動制御化し,これまでよりも詳細に平均面圧と平均摩擦せん断応力の関係を調査した.予備実験の結果から,真実接触部の摩擦法則は摩擦せん断応力一定則が成立していると推測したが,今回の本実験の結果より,摩擦応力の急増はわずかなミクロ凝着により引き起こされており,クーロン則に従うことが明らかになった.この実験事実から,本摩擦試験よりもさらに高面圧下での摩擦現象についても調査を行い,新しい摩擦法則の基礎を構築する段階に入っている.以上より,本研究はおおむね順調に進行している.
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今後の研究の推進方策 |
板成形から鍛造までの一般的な接触面圧(p/Y = 3 程度まで)における摩擦現象を定式化することにより,ほとんどの塑性加工における摩擦現象が理解できるようになり,さらにこれまで困難であったドライでの鍛造に対しても重要な知見を得ることができる.そこで本摩擦試験機と高接触面圧下での実験が可能な摩擦試験機を用いて,異なる試験片材質での摩擦試験を行い,摩擦法則を定式化するための基礎データを収集する. 本摩擦試験では接触面圧pが降伏応力Y程度までの摩擦現象を調査し,さらに高面圧下における摩擦実験は本摩擦試験と同一の試験片材料および表面処理の工具を用いて,静岡大学の摩擦試験機を借用して実施する.これらの結果から,現在提案しているドライ加工における新しい摩擦法則を定式化する.
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