塑性加工における摩擦法則は,クーロン則と摩擦せん断応力一定則の2つが一般的に用いられている.本研究では,真実接触部における摩擦法則は明確でないと考え,有限要素解析と実験によりこれを検証した. 本研究では工業用純アルミA1050-H24の板材に複数の平行微小突起を設け,耐焼付性に優れるダイヤモンドライクカーボン(DLC)をプラズマCVD法でコーティングした金型と無潤滑下で摩擦させた.このとき,圧縮荷重や摩擦力はロードセルにより測定した. 摩擦試験の結果,有限要素解析による結果と同様に,試験片がバルク変形を始めると,金型と接触して平坦になった部分(平坦部)の見かけ上の面積の割合(平坦化率)は急増した.しかし,平均摩擦応力は急増することなく平均面圧の増加に伴い一定に増加した.この結果について,平坦部を電子線三次元粗さ解析により詳細に解析すると,バルク変形を始める前では平坦部の表面は平滑であるが,バルク変形後は平坦部に凹凸が見られるようになり,粗くなったことを確認した.これより,バルク変形後の平坦部は全面が金型と接触しているのではなく,部分的に接触していると考えられる.これらの結果を踏まえ,新しい摩擦法則を提案した. 提案した新しい摩擦法則を,より高面圧で摩擦させることが可能な摩擦試験とリング圧縮試験により検証した.高面圧下では平均面圧によらずほぼ一定の平均摩擦応力を示し,提案した摩擦法則によく合うことが明らかとなった.また,リング圧縮試験の有限要素解析について,新しい摩擦法則を適用した有限要素解析結果は従来のクーロン則を適用した解析結果よりも,実際のリング圧縮試験の結果に近いことがわかり,新しい摩擦法則の有効性が明らかとなった.
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