結晶粒を微細化することによる材料強化技術が注目されている.この有力な方法の一つに,繰り返し重ね接合圧延(ARB)が挙げられる.この方法により作成された板材は,過度の負荷が作用した場合,接合界面から剥離が生じるという欠点を有する.したがって,ARBの基礎となる接合圧延において,接合強度を向上させる技術開発が望まれている. 本年度は,接合圧延前の被加工材の表面処理として,ウォータージェット(WJ)により酸化皮膜を除去することを試みる予定であったが,この技術に詳しい有識者が本機関を退職してしまったため(WJ設備も他機関へ移設),技術的アドバイスを請うことが難しくなった.また,WJ設備についても,圧延機近傍に設置可能なものを有する公的機関を見つけることができず,予定した実験を行うことができなかった. その代わりに,一昨年度および昨年度の実験データにおいて学会等で指摘されていた「実験試行回数の少なさに起因するデータ信頼性の乏しさ」を解消するために,接合圧延実験を繰り返して十分なサンプル数を用意し,そこからピーリング試験によって接合強度のばらつき具合を評価した. 結果として,Equal Channel Angular Rolling (ECAR)を通常の接合圧延の直後に施して接合強度を高めるという,我々が提案する手法について,接合強度の上昇量(平均値ベース)が約30%から約50%へ上方修正され,最大値でみると約100%アップ(つまり,接合強度が2倍)したものも確認された.
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