研究課題/領域番号 |
25820033
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
田中 健太郎 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (60359693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 液体架橋 / 濡れ性 / 接触角 / 接触線 / すべり |
研究概要 |
既有の実験装置を用いて,二固体面間に挟まれた液体架橋のせん断過程における,せん断抵抗に及ぼす固体表面粗さの影響を詳細に測定した.また画像処理プログラムを改良して接触線移動位置の判定と移動量の定量を行った.その結果,接触線の移動が制限(ピン止め)される場合に,液体架橋の変形が大きくなり,これによる気液界面エネルギーの増加分に相当するせん断抵抗が生ずることが明らかになった.表面粗さが大きい場合には,ピン止めの効果が増し,より大きなせん断抵抗が計測された.また新たな知見として,表面粗さの大小に関わらず,接触線の移動が常に下側の固体面との界面から始まることが分かった.これは,静止状態から下側固体面を動かしてせん断を与えていることにより,液体架橋がその場に留まろうとする慣性の効果が下面界面でのみ顕わていると推測している.上下界面で接触線の移動挙動に差があることは,転写式プリンターなどにおいて重要な意味を持つ可能性がある. また気液界面の曲率を無視した単純な2次元モデルを構築し,気液界面エネルギーの変化に基づいた説明により,せん断抵抗とせん断率の間に比例関係が見出されることを示した.また実験結果をよく説明できることを示した.一方で,接触線がピン止めされるためには,界面エネルギーの変化に加えて,いわゆる摩擦抵抗のような成分が必要であることを見出した.表面粗さの大小は,この摩擦抵抗成分に寄与すると考えている. 最終年度においては複数系統からの界面形状観察により,接触線の移動を精密に測定し,摩擦抵抗成分の表面粗さ・せん断速度依存性,寸法効果を明らかにする計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は,架橋形状の観察系を改良して,気液界面形状と(下面での)固液・固気界面形状の2系統化を進める予定であったが,上下界面における接触線挙動の同時観察系の構築が重要であると判断し,装置設計を見直した.このため当初予定してた観察系の購入等が26年度にずれ込んでいる. 一方で,計画段階では予想していなかった慣性効果を確認するなど重要な実験結果を得ており,「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた液体架橋の気液界面形状と,下面での固液界面形状の観察に加えて,上面での固液界面形状の観察も同時に行える観察系を構築する.上下界面での接触線の移動を精密に測定し,摩擦抵抗成分の表面粗さ・せん断速度依存性,寸法効果を明らかにする計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた2系統からの観察系を,3系統からの観察系に変更することとした.このため,観察系の再構築に時間を要し,高解像度カメラ,レンズ,照明等の物品の購入が遅れた. 新しい観察系の設計は済んでいる.26年度のはやい時期に,遅れていた観察系の製作を進める予定である.観察系構築以降の実施計画は,変更なく進めることができると考えている.
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