研究課題/領域番号 |
25820036
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
長谷 亜蘭 埼玉工業大学, 工学部, 講師 (10552953)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アコースティックエミッション / 摩耗 / 損耗 / 通電 / 放電 / 溶融 / 可視化 / 状態監視 |
研究概要 |
本研究は,材料の変形・破壊時に発生する弾性波を検出するアコースティックエミッション法(AE法)を利用して,通電下のトライボロジー現象(摩擦・摩耗,溶融・放電)の認識と損耗状態の定量的評価を目的としている.通電に伴う損耗は,集電材料の摩耗を急激に進行させるため,その診断評価技術の確立は大きな意義がある.また,通電下の損耗現象を顕微鏡視野内で拡大観察すると同時にAE信号の計測を行う本実験手法は,世界的にも例がなく,非常に特色のある研究になると考える. 平成25年度は,光学顕微鏡に通電摩擦駆動系・AE計測系を組み込んだ実験装置の構築を行った.ここでは,3次元形状計測が可能な光学顕微鏡を選定し,実験中の摩擦面の損耗状態を評価できるようにした.また,顕微鏡視野内にピン・オン・ブロック型の摩擦系(摩擦力計測系を含む)を設置し,電圧印加回路および電圧降下測定回路,AE計測系を組み込んだ.さらに,顕微鏡カメラに高速度カメラを追加することで,速い摩擦速度での実験を実施できるようにするとともに,摩擦界面で瞬間的に発生するアーク放電現象を捉えられるようにした.実験装置の構築後,十分なノイズ対策を施し,摩擦駆動系や計測系の調整を行った. 人為的に試験片を乖離させて放電現象と溶融現象を発生させる予備実験結果から,放電時には白色や青白い発光が発生し,溶融時には橙色や黄色の発光が観察できることを確認した.この各現象時に計測されたAE信号の周波数解析を行い,放電時には高周波のピークが存在し,溶融時には低周波のピークが存在する傾向がみられた.また,長摩擦距離の通電下摩擦実験において,銅系焼結合金と鉄系焼結合金のAE周波数の特徴が異なることがわかってきた.これは,摺動材料材種による通電下の主たる損耗現象が異なることを示唆していると考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画として掲げていた「計画1)システム顕微鏡に通電摩擦駆動系・AE計測系を組み込んだ実験装置の構築」は達成することができた.そして,平成25~26年度の計画として掲げた「計画2) 顕微鏡下での現象再現実験」についても着手することができた.また,平成26~27年度に掲げた「計画5) 実機を想定した長摩擦距離の通電摩擦・AE計測実験」を先行して同時に予備実験を実施し,上記に述べた結果を得ることができた.各損耗現象と信号波形解析結果の詳細な対応付けとAE発生メカニズムの理論的な考察については,計画通り平成26年度も継続して遂行していく.以上のように,当初の計画を概ね順調に進展できているとえる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,当初の計画通り「計画2) 顕微鏡下での現象再現実験」を実施するとともに,「計画3) 顕微鏡下での通電摩擦・AE計測実験」,「計画4) AE信号-損耗現象マップの作成・検討」,「計画5) 実機を想定した長摩擦距離の通電摩擦・AE計測実験」を遂行していく. 計画2)の実験の発展として,集電材料および摺動条件(荷重,摩擦速度)の違いによる,現象およびAE信号への影響について調査を行う.計画4)のAE信号-損耗現象マップ作成のために,数種類の材料(銅系,鉄系,炭素系材料など)および数通りの実験条件で実験を行い,AE信号振幅値やAE周波数などの変化を調べる.さらに,実用環境下を想定した水雰囲気下(雨天時)や異物混入時(砥粒などを混入させた三元アブレシブ摩耗)の実験も実施する. 計画2)および3)で得られた実験結果を元に,横軸にAE信号周波数,縦軸にAE信号振幅値をとったAE信号-損耗現象マップを作成する.ここでは,計画2)および3)の実験を同時遂行し,現象遷移点におけるAE信号の特徴変化を明確にし,マップの信頼性および精度を高める. 計画4)で体系付けしたAE信号-損耗現象マップの検証・確認のために,実機を想定した長距離の摩擦・摩耗実験を実施する.ここでは,定量的関係を見いだすために,損耗状態とAE信号パラメータとの関係を調べる.AE評価パラメータに関しては,AE平均値とAEエネルギーを用いる.最後に,計画2~5)の結果を総合的に検討し,AE波形解析およびAEパラメータによる診断評価方法の指針を提示する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度4月に参加する国際会議(ACT2014)の参加登録料の事前振り込みができず,4月参加時の現地支払いとなるため,次年度の使用となってしまった.また,3月に発注した物品の納期が次年度にずれ込んでしまったため,こちらも次年度の使用となる. 国際会議(ACT2014)の参加登録料および消耗品費(研磨紙および洗浄薬品)として使用する.
|