研究課題/領域番号 |
25820048
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 和豊 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00344622)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱流騒音 / 直接同時解析 / 格子ボルツマン法 / ターボ機械 / 空力音 |
研究概要 |
ファン等の空力騒音が問題となっている流れ場は低速であることが多く,空力騒音解析には流れ場と音場を分離して解析する分離解法と呼ばれる手法が一般に用いられる.しかし,分離解法では,音の散乱,反射,放射の効果を考慮できないため,問題となる高周波数の乱流騒音に関して定量的な予測が難しい.このような空力騒音の予測には,音響解析が要求され,流れ場および音場の直接計算が有効である.しかしながら,直接計算は,計算規模が大きいことに加え高い計算精度が要求されるため,実現が困難とされる. 本研究では,上述のような空力騒音の直接解析の計算手法として,格子ボルツマン法に着目する.格子ボルツマン法は,高速並列計算により大規模計算が可能であり,低速流れであっても高精度に計算できることから,空力騒音の直接解析への応用が期待される.そこで,実問題について流れ場および音場の超大規模直接計算を実施し,格子ボルツマン法の有効性および予測精度を検証する. 初年度は,格子ボルツマン法の開発を行った.格子ボルツマン法は,直交等間隔格子を使用するため,計算格子の配置に自由度がなく必要以上に計算規模が増大する.そこで,この問題を解決するために,マルチスケールモデルの導入を行った.また,格子生成にはBCM(Building Cube Method)を導入し,計算を効率化させた.乱流騒音が主でない,鈍頭物体からの放出音は比較的予測しやすいことから,円柱流れを対象に開発した計算コードの検証を実施した.円柱流れについて流れ場および音場の直接計算を実施し,公開されているNavier-Stokesによる直接計算結果との比較から,その予測精度を検証し,本計算手法の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最小渦スケールまで解像する直接計算において,等間隔直交格子を用いる格子ボルツマン法では,計算格子は大規模化する.この問題は高レイノルズ数流れになると顕在化するため,格子ボルツマン法にマルチスケールモデルを導入することを企図していた.本年度,このマルチスケールモデルを導入したLBMのコード開発は終了した.格子生成にはBCMを用いることを想定していた.BCMは,ブロック単位で格子細分化を行うため,並列計算時に計算負荷を均等化できる.また,計算アルゴリズムの単純さや並列計算との親和性など,格子ボルツマン法の利点を損なうことなく格子細分化が可能となる.これについても,導入が完了している.さらに,円柱流れを対象とした計算コードの検証も予定通り終了しており,本研究の目的である乱流騒音の直接解析に向けた準備が完了した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,最終的に低速のプロペラファンを対象として空力騒音予測を実施することを企図している.この空力騒音予測においては,高周波数の乱流騒音が重要となる.今後は,高周波数の乱流騒音の予測精度について着目して,本計算手法の検証を行っていく.まずは,低速ファンについて空力騒音の直接解析を実施する前に,問題を単純化して,実験データが公開されている二次元翼を対象に格子ボルツマン法による直接計算(翼形状は二次元だが計算は三次元)の検証を行う.検証は計測結果との比較により行うが,計算は比較的小規模で済むため,Navier-Stokesによる直接計算を実施し,その結果との比較も実施する. 本研究では,対象とする流れが低速であるため,格子ボルツマン法のモデルに計算量の少ない非熱流体モデルを採用している.このモデルは等温モデルであり,温度場が考慮されない.そこで,エネルギー保存則を満足する熱流体モデルとの比較検証を実施し,局所的な音速の変化が空力音の予測精度に及ぼす影響についても調査する.
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次年度の研究費の使用計画 |
乱流騒音に関する計算コードの予測精度および有効性の検証のために,低騒音風洞を用いて翼から発生する空力騒音の計測を実施することを企図している.そのため,当初,本年度に計測対象となる二次元翼を製作,騒音計測のための機器等を購入して騒音計測の準備をする予定であった.しかし,計算コード開発用としてPCの性能が不足していたため,次年度に購入予定であった解析用PCを前倒しして購入した.これにより,当初予定した翼の製作や計測機器の購入は,次年度に繰り越し購入することとした. 次年度の初めは,検証用の計測データがないため,実験データの公開されているものを対象として計算コードの開発を進める.それと同時に,乱流騒音データ取得のための準備を進める.その準備として,二次元翼の製作および計測機器等の購入を行う.繰越額は次年度分と合わせてこの準備に充てる.
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