研究課題/領域番号 |
25820049
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
本澤 政明 静岡大学, 工学研究科, 助教 (50516185)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気機能性ナノ流体 / 磁性流体 / 物性計測 / 強制レイリー散乱法 / UVP / 超音波伝播特性 |
研究実績の概要 |
本研究では,磁場に応答する磁気機能性流体の一種で,内部強磁性微粒子が10 nm 程度の磁気機能性ナノ流体(磁性流体)を取り上げた.磁場印加下の磁性流体は,内部強磁性微粒子が凝集し,磁場方向に鎖状クラスターを形成する.このクラスターの磁場印加時からの成長,形成方向(磁場方向)によって,磁場印加による物性変化には,異方性や経時変化があることが示唆される.本研究では,光や音を用いて非接触,非侵襲により熱物性やレオロジー特性の計測を磁場印加下で行い,磁場印加による流体内部構造の変化と物性変化の相関性を精査することを目的としている. 本年度は,実施計画の2年目に当たり,昨年度からの継続事項を実施計画に基づいて研究を進め,以下に示すような結果が得られている. 1.強制レイリー散乱法による熱拡散率の計測:磁性流体の熱物性計測については,強制レイリー散乱法により磁場印加後からの経時変化の計測が可能になった.詳細に計測を実施し,磁性流体の熱物性の異方性,磁場印加後からの経時変化,磁場強度依存性など内部クラスター構造変化に依存すると見受けられる特徴的な物性変化を捉えている. 2.超音波伝播特性による内部構造解析:流体中の超音波伝播速度を高精度に測定するシステムの構築が完了し,測定を実施している.現状では,上記と同じ磁場印加条件下で超音波伝播物性の異方性,経磁変化を測定し,熱物性変化と超音波伝播物性変化の比較を試みている. 3.UVP+PD法によるレオロジー特性の推定:本年度は,新たなUVPシステムを構築し,導入した.UVP+PD法によるレオロジー特性の推定のため,予備実験として粘弾性流体(界面活性剤水溶液)を試験流体として,実際に速度分布と差圧の計測を行い,レオロジー特性の推定を試みた.今後より詳細な解析方法を検討し,磁性流体に適用していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強制レイリー散乱法による磁気機能性ナノ流体(磁性流体)の熱拡散率計測に成功し,磁場印加時の熱拡散率の異方性,磁場印加後からの経時変化,磁場強度依存性といった物性変化のデータを順次取得している.また,これに併せて超音波伝播特性の計測システムの構築も完了し,熱物性計測と同様の条件で実験を行い比較が可能な状況になっている.UVP についても新システムを構築し,予備測定として,粘弾性流体を試験流体として用いて,UVP+PD法によるレオロジー特性の推定の実施を進めているところである.以上を通して概ね順調に研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,研究実施計画の最終年度ということで,磁場印加時の磁気機能性ナノ流体(磁性流体)の熱物性の異方性や経時変化,磁場依存性についてより詳細に計測を行い,超音波伝播物性のデータと比較することで内部構造変化と熱物性変化の相関性について総括してく予定である.また,熱物性変化と同様にレオロジー特性についても計測を重ね,磁場印加下における磁性流体のレオロジー特性の磁場方向依存性などについても議論していく予定である.最終的にはこれらの成果をまとめて,国際会議や論文で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の主だった研究費の使用は,昨年度までの研究成果の国際会議・国内学会発表のための海外・国内出張旅費と新UVP計測システム構築のための高速デジタイザー一式(ナショナルインスツルメンツ製,PXI-1033・PXI-5114,その他周辺機器)である.その他には,超音波発振のためのパルサー/レシーバーや消耗品として振動子,光学部品などに使用した.昨年度の繰越分と合わせて使用し,必要な出張を行い,物品もほぼ購入出来たため,残りは次年度へ繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用計画は,レオロジー特性試験のための流路変更を検討しており,試験流路,微差圧計測センサーの購入が主だった出費となる.この使用については,昨年度使用計画において計画していたが,新UVP計測システムの構築を優先させたため変更した.また,本年度までの成果を国際会議・国内学会で発表するため,旅費や論文投稿料として研究費を使用する予定である.
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