研究課題/領域番号 |
25820052
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 誠一 明石工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00599251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロポンプ / PIV測定 / 非定常流 / 渦 |
研究概要 |
脈動流によって駆動するバルブレスマイクロポンプの内部流れを詳細に理解する目的で,ポンプ流路の可視化用模型を製作し,PIV(Particle Image Velocimetry)測定を実施した.供試ポンプは従来開発を行ったディフューザ型バルブレスマイクロポンプとし,ディフューザ角および深さを変更した異なる形状を14種類準備した.流路幅は可視化が比較的容易な寸法として4 [mm] とし,これまで蓄積したReynolds数,Wormersley数の無次元特性よりポンプ運転条件を決定した.脈動流はステッピングモーターに取り付けられたクランク機構とシリンダーによって発生させた.可視化は流路内の作動流体にトレーサー粒子を懸濁し,流路本体側部よりレーザーシート光を照射することでその散乱光を撮影した.正味のポンプ性能は流量計と圧力計により同時に測定を行った. PIV測定結果より,流動抵抗の非対称性は,脈動流の1周期の吐出し行程(ディフューザ形状流路において拡散方向に流れる時間)における流れが減速する時間に流路内部で発生する渦よるものと確認できた.発生する渦の様相は,高いポンプ性能を示すほど大きくなり,また回転方向が変化することが明らかになった.さらに,発生する流れの渦度がポンプ性能と相関をとる重要な知見が得られた.これらの関係を内部流れの支配パラメータである無次元数と関連付けて評価することでバルブレスマイクロポンプの流体輸送現象が明確になると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画として以下の項目について実施し,その状況は下記の通りである. ・ポンプ内部流動の可視化装置の製作:本実験装置は,ポンプ流路にの下部に,ステッピングモーターに取り付けられたクランク機構とシリンダーによる脈動流発生装置を取り付けて一方向流れ実現した.ポンプはマイクロポンプの力学的相似をから観察が容易な寸法(幅4mm)で設計し,材料をアクリルとすることで内部の流れが可視化可能なものとした.ポンプ流路,高速度カメラ,光源を固定するステージを設計製作し,ポンプ性能測定には超音波流量計および圧力トランスデューサを取り付け完成させた. ・数値解析による内部流れ解析:流路内部の数値解析には汎用流れ解析ソフトを用い計算を実施中である.現在,比較的周波数,振幅共に低い条件での計算を完了しており,Reynolds数の高くなる高い周波数,振幅の条件での計算における乱流モデルの適用について検討中である. ・予備データの取得(ポンプ性能試験):製作した装置を用い脈動流の周波数,振幅,流路の形状の変化に対するポンプ性能の測定を実施した.正味のポンプ性能については数値解析と概ね一致することを確認している.入口,出口の流量の時間履歴についてはセンサー破損のため取り替えて現在実施中である.また,ポンプ内部流れの可視化を実施し,撮影条件およびPIV解析の条件について確立した.内部流れのPIV測定と評価方法について並行して実施し,ディフューザ形状流路内部の渦流れをポンプ性能と関連付けて評価を行い上述の通り良好な関係が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては以下の計画で研究を推進する予定である. ・数値解析による内部流れ解析:モデルの検討が完了次第計算を継続する.計算は機関内に現有する計算機を数台確保しており,これらを用いて効率的に進める予定である. ・内部流れのPIV解析および測定結果の評価:予備実験データの結果を元にポンプ流路入口・出口の流量・圧力と内部流れとの同時測定を実施していく.測定結果の評価については当初の計画通りに実施するのに加えて,予備データより明らかになった渦度による流れ場の評価を無次元数による流れの分類の評価指数として測定結果を整理する.整理されたデータをもとに,目標値である揚程40kPaを達成可能なポンプを提案・製作する.データ整理は膨大な量となることが予想されるため,実験補助に研究室学生を補助員として採用して実施すると同時に,機関内研究者(機械工学科 藤原誠之准教授)との議論や本技術の共同出願者である九州工業大学 宮崎康次教授とのEmail などを有効活用したデータの検証によって研究を効率的に進める計画である.
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