平成25年度,26年度には主にLeverett関数の改善と,流路-GDL界面モデルの改善を行った.平成27年度には,SPring-8で測定したGDL内の液滴直径分布を基に,液滴直径が相変化速度と拡散・熱伝導特性へ与える影響を考慮したモデルへの拡張を行った. X線CT画像から液水の挙動を調べるために蒸発,凝縮,圧入モードの三通りの実験を行った結果,蒸発モードでは小さな液滴が多く残り,凝縮モードでは大小の液滴が生じることが撮影画像・ヒストグラムから読み取れた.一方で圧入モードでは大液滴が大きな空隙を移動することがわかった.また同時に拡散係数,熱伝導率の測定を行ったところ液水生成モードによってその値が大きく変動することがわかった.そこでGDL中の液水を大小どちらかの直径を持つ液滴とみなし,拡散係数は液滴が空隙を塞ぐことでガス拡散を阻害することから各液滴の総体積によって,熱伝導率はGDL繊維間の液滴が熱伝導パスとなることから各液滴の総数によって変化すると定義した.さらに大液滴と小液滴それぞれに蒸発速度を定義し,気液界面面積の大きさから大液滴が先に蒸発し,小液滴になると仮定した.また液滴の直径や凝縮モード時における大小液滴の生成割合は液滴直径ヒストグラムから算出した.それによりこれまで再現の難しかった,例えば電流密度を1.0[A/cm2]から0.01[A/cm2]に減少させた際の複数の変曲点のある複雑なセル電圧・膜抵抗応答を再現できるようになり,液滴直径モデルの有効性を明らかにした.
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