固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル内では,燃料や酸素の濃度が不均一となり,電流分布が生じる.これにより発電が有効に行われない部分が生じたり,Ni触媒の酸化還元の繰り返しによる劣化や,温度分布の発生により熱応力に伴うセルの機械的劣化が進行する問題がある.特に,都市ガス等の実燃料である炭化水素の改質燃料では内部改質反応を伴うため,より複雑な電流,温度分布を示す.そこで本研究では,空気極を分割して塗布,焼成した単セルを作製し,各部セル電圧が等しくなるように電子負荷器を設定しながら,炭化水素改質燃料組成のガスを供給し,各部電流および表面温度を直接計測して,セル内電流分布要因および内部改質反応(吸熱反応)速度の分布を明確にすることを目的としている.SOFCとして,電解質薄膜化や高導電率の支持体による内部抵抗低減の観点から注目されている燃料極支持型の,円筒形マイクロSOFCを作製した.Ni/8YSZ燃料極支持体を製作し,これを8YSZスラリーでディップコーティングした後,共焼結を行った.さらに空気極としてLSMスラリーを塗布し焼成した.このセルについて,炭化水素改質組成燃料および空気を供給し,800℃で電流電圧(IV)特性を評価したところ,発電電流を取り出すことができた.また,熱電対をこのセルの空気極表面3か所に設置し,発電中の各部温度を計測することができた.その結果,炭化水素改質燃料では,メタンの内部改質反応と電気化学反応が,Ni触媒上の三相界面で進行し,下流側に向かって,内部改質反応速度が増大して触媒を専有することで,電気化学反応が抑制されることが示された.また,燃料供給速度が低下すると,Ni触媒上でのメタンの滞留時間が増大して,内部改質反応速度が増大して,吸熱反応による温度低下の影響が増大することが示された.
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