• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

高分子材料設計のための大規模分子シミュレーション手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25820065
研究種目

若手研究(B)

研究機関慶應義塾大学

研究代表者

高橋 和義  慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (60645208)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード分子動力学 / 高分子 / Langevin Dynamics / マルチスケール接続 / 相互作用計算 / Tree法 / IPS法 / LIPS法
研究概要

高い計算精度をもつ相互作用計算手法であるLinear-combination based Isotropic Periodic Sum (LIPS)法の、多重極展開と計算領域の階層的分割を用いたTree法による高速化は、大規模並列分子動力学(MD)シミュレーションのための相互作用計算手法として期待できるが、LIPS法以外にもTree法による高速化が可能な相互作用計算手法が複数存在する。そこで、Tree法と組み合わせるべき手法としてのLIPS法の優位性を明確にするために、LIPS法と複数の代表的な相互作用計算手法との精度比較を行った。極性分子のバルク系における結果はLIPS法の有意性を確認するに十分であった。
一方で、極性分子の気液界面系においては、通常のIPS法と比較してLIPS法の優位性は十分に確認できなかった。これはIPS/Tree法に対するLIPS/Tree法の優位性が十分でないことを意味する。そこで、LIPS法の理論的枠組を用い、新たな相互作用計算手法であるLIPS-SWitch(LIPS-SW)法を開発した。LIPS-SW法は極性分子のバルク系においてLIPS法と同等の精度を確保しつつ、気液界面系において大幅な精度の改善を達成した(一定の計算精度を達成するために必要な計算量の指標となるカットオフ半径を、IPS法およびLIPS法の1/4まで低減させることに成功)。
以上の検証・開発の結果から、平成25年度の課題であったLIPS/Tree法の開発をLIPS-SW/Tree法の開発へと切り替えた。なお、LIPS-SW/Tree法の開発はLIPS/Tree法の開発と同様に、IPS/Tree法の研究成果を用いれば比較的容易である。
また、平成26年度以降の課題であるLangevin Dynamics(LD)シミュレーションにもすでに着手している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の課題はLIPS/Tree法の開発・実装および計算速度・精度の評価であった。LIPS法の検証とLIPS-SW法の開発によって当初の予定とは異なるLIPS-SW/Tree法の開発を目指すこととなったが、計算精度の評価という観点ではむしろ大きな前進と言える。また、平成26年度以降の課題であるLDシミュレーションにすでに着手している。これらの点からおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

LIPS-SW/Tree法の開発・実装を急ぎ執り行う。LDシミュレーションによる計算・解析を前倒しして行うことで、計算資源の使用率を高く保つだけでなく、研究の効率的な推進を図る。高分子系のMDシミュレーションは平衡状態に至るまでの緩和時間が長く、計算コスト増大につながるため、この点を改善する各種手法の導入も重要な課題であると考える(注:本研究が必要としている情報は、平衡状態到達後の高分子系の数十マイクロ秒にわたる軌跡である)。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額が生じた理由は主に2つ挙げられる。ひとつは、LIPS/Tree法の開発以前にLIPS法の精度検証およびLIPS-SW法の開発を優先したためである。これにより平成25年度に予定していた科学計算用GPUの購入は見送った。もうひとつは、情報収集の重要さに起因する。現在、MDシミュレーションのための高速化手法はその需要の高騰に応じて世界中で精力的な研究が行われており、その動向調査が本研究には必要不可欠であるとの結論を得ている。そのため、国内外を問わず情報収集を行う必要があった。
GPUの購入費をA、情報収集のための旅費をB、次年度使用額をCとすると、概ね次の式が成り立つ。
C = -(B - A)
次年度はLIPS-SW/Tree法の開発・実装を急ぐため、科学計算用GPU購入のための使用を予定している。同時に、積極的な情報収集や研究発表などのための使用を予定している。また、研究成果を学術論文として公刊するための使用を予定している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Design of a Reaction Field Using a Linear-Combination- Based Isotropic Periodic Sum Method2014

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Z. Takahashi
    • 雑誌名

      Journal of Computational Chemistry

      巻: 35 ページ: 865-875

    • DOI

      10.1002/jcc.23562

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Truncation Effects of Shift Function Methods in Bulk Water Systems2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Z. Takahashi
    • 雑誌名

      Entropy

      巻: 15 ページ: 3339-3354

    • DOI

      10.3390/e15083339

    • 査読あり
  • [学会発表] Applications of a Linear-combination-based Isotropic Periodic Sum Method in Molecular Dynamics Simulations2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuaki Z. Takahashi, Takuma Nozawa, Shun Kameoka, Donguk Suh, Tetsu Narumi, and Kenji Yasuoka
    • 学会等名
      3rd International Conference on Molecular simulation (ICMS2013)
    • 発表場所
      Kobe (Japan)
    • 年月日
      20131118-20131120
  • [学会発表] Relaxation modulus connection between Atomistic and Coarse‑Grained Molecular Simulation of Polymer Melts using the Rouse Parameters2013

    • 著者名/発表者名
      Nobuyoshi Yamato, Iori Yonekawa, Kazuaki Z. Takahashi, Kenji Yasuoka, and Yuichi Masubuchi
    • 学会等名
      3rd International Conference on Molecular simulation (ICMS2013)
    • 発表場所
      Kobe (Japan)
    • 年月日
      20131118-20131120
  • [学会発表] Molecular dynamics of 5CB with GPU accelerated Coulombic calculation2013

    • 著者名/発表者名
      Takuma Nozawa, Kazuaki Z. Takahashi, Tetsu Narumi, and Kenji Yasuoka
    • 学会等名
      3rd International Conference on Molecular simulation (ICMS2013)
    • 発表場所
      Kobe (Japan)
    • 年月日
      20131118-20131120
  • [学会発表] 5CB液晶の秩序化における静電相互作用の影響2013

    • 著者名/発表者名
      野澤拓磨, 高橋和義, 成見哲, 泰岡顕治
    • 学会等名
      熱工学コンファレンス2013
    • 発表場所
      青森
    • 年月日
      20131019-20131020
  • [学会発表] 棒状液晶の分子動力学シミュレーションにおける静電相互作用の影響2013

    • 著者名/発表者名
      野澤拓磨, 高橋和義, 成見哲, 泰岡顕治
    • 学会等名
      第17回液晶化学研究会シンポジウム
    • 発表場所
      茨城
    • 年月日
      20130613-20130613

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi