研究課題/領域番号 |
25820066
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
一柳 満久 上智大学, 理工学部, 准教授 (00584252)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | マイクロ熱流体 / マイクロ伝熱 / 可視化計測 / 熱機関 / 熱伝達 |
研究実績の概要 |
マイクロ流路内の気液界面現象の解明および相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価を主たる目的として,可視化計測技術の開発およびCFDによる流動解析を行った.初年度は,気液界面現象の解明を目的とし,T字型マイクロ流路内の気泡生成過程を研究対象とした.従来では,生成された気泡径はキャピラリー数(粘性力と表面張力の比)により整理されてきたが,本結果では整理できず,ウェーバー数(慣性力と表面張力の比)により整理ができることが明らかとなった.この結果は,マイクロスケールの流動(レイノルズ数が小さいため,慣性力よりも粘性力が支配的である流れ)であったとしても,気泡径を決定するファクターとして慣性力が起因していることを示唆している.二年度では,相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価を主たる目的とした.研究対象は,次世代半導体デバイスの予想発熱量である1平方ミリメートルあたり数ワットの除熱デバイスの開発支援のためのCFD解析とした.本研究では,省電力化を図るため,高熱流束除熱にはマイクロヒートパイプの実装を,またパイプ内の流体の圧送には電気浸透ポンプの実装を想定している.今回はその中でも,電気浸透ポンプ流量および放熱量の関係を数値解析にて明らかにした.その結果,毎秒3mmの代表流速にて,1平方ミリメートルあたり2ワットの放熱の可能性が示された.ただし,マイクロヒートパイプ内では,毎秒3mmの代表流速は高速流れにあたるため,性能を最大限に活用するためには電気浸透ポンプの最適設計が必要となる.そのため,電気浸透ポンプ最適設計の基礎研究に着手し論文掲載に至ったが,三年度ではその基礎知見を踏まえた実デバイスの開発に従事する.さらに,三年度では,相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価の二種目として,熱機関の伝熱特性の研究にも着手する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年度の研究目的は,次世代半導体デバイスの予想発熱量である1平方ミリメートルあたり数ワットの除熱デバイスの開発支援のためのCFD解析を実施することであった.その目的に対し,以下に示す4点が遂行されていることから,現時点で研究が「おおむね順調に進展している」と判断した.
1.電気浸透ポンプ流量および放熱量の関係をCFDにより定量的に明らかにした. 2.開発の目的である1平方ミリメートルあたり数ワットの除熱が,毎秒3mmの代表流速にて可能となることが示唆された. 3.電気浸透ポンプで毎秒3mmの代表流速を実現するためには,ポンプの最適設計が必要になるため,基礎研究を実施した. 4.これらの研究結果をまとめて,学術雑誌に論文が掲載された.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究展開としては,二種を実施していくことを考えている.一種目は,二年度の研究の継続として,次世代半導体デバイスの予想発熱量である1平方ミリメートルあたり数ワットの除熱デバイスの開発および伝熱特性の評価とする.二年度で明らかとなったこととして,マイクロヒートパイプ内の流速を,電気浸透ポンプにて非常に高速にする必要があるということであった.電気浸透ポンプは,印加する電界を大きくすれば,流速を上げることは容易であるが,省電力化とはトレードオフの関係にある.そのため,電界を大きくせずに流速を上げるためには,電気浸透ポンプを支配するゼータ電位の基礎研究が必要であった.二年度では,ゼータ電位およびポンプ流量の最適化を図ったため,次年度では最終的にマイクロヒートパイプの性能(熱抵抗,最大熱輸送量など)を定量的に評価する.特に,作動流体の蒸発・凝縮による相変化が流動現象に与える影響に関して明らかにし,デバイス化への一助となる知見を得ることを目的とする.二種目は,相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価を目的として,熱機関の伝熱特性の研究にも着手する.熱機関では,発生した熱エネルギー全てを動力に変換することはできず,必ず熱損失が発生する.熱損失の推定は,これまでにも行われてきているが,その多くが1980年代以前の実験式ならびに経験式を利用しており,近年著しい進歩は見られていない.本研究では,経験式に頼らず,エネルギー方程式を基盤とした物理モデルから熱損失を推定することに着目し,熱機関内部のガスおよび壁面との熱伝達率に関する新たなモデルを構築する.その後,熱流束の実測することで,熱伝達率モデルの有用性を検討する.
|