マイクロ流路内の気液界面現象の解明および相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価を主たる目的として,可視化計測技術の開発およびCFDによる流動解析を行った.初年度は,気液界面現象の解明を目的とし,T字型マイクロ流路内の気泡生成過程を研究対象とした.従来では,生成された気泡径はキャピラリー数(粘性力と表面張力の比)により整理されてきたが,本結果では整理できず,ウェーバー数(慣性力と表面張力の比)により整理ができることが明らかとなった.この結果は,マイクロスケールの流動(レイノルズ数が小さいため,慣性力よりも粘性力が支配的である流れ)であったとしても,気泡径を決定するファクターとして慣性力が起因していることを示唆している.二年度では,相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価を主たる目的とし,次世代半導体デバイスの予想発熱量である1平方ミリメートルあたり数ワットの除熱デバイスの開発支援のためのCFD解析を行った.本研究では,省電力化を図るため,高熱流束除熱にはマイクロヒートパイプの実装を,またパイプ内の流体の圧送には電気浸透ポンプの実装を想定し,電気浸透ポンプ流量および放熱量の関係を数値解析にて明らかにした.その結果,毎秒3mmの代表流速にて,1平方ミリメートルあたり2ワットの放熱の可能性が示された.三年度では,相変化を伴う熱デバイスにおける伝熱特性の評価の二種目として,熱機関の伝熱モデルの構築および実機への適用を行った.伝熱モデルを導入した制御器の開発により,空燃比変動が単気筒で84%,および多気筒で48%低減された.さらに,伝熱モデルを燃焼変動低減に適用したところ,20%以上の低減が確認され,構築した伝熱モデルの有用性が示された.
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