研究課題/領域番号 |
25820075
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木庭 洋介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (20380602)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機械力学 / 集中系モデル / 声道モデル |
研究概要 |
声道を異なる粘弾性,断面積を持つ弾性管が縦続する音響管として,質量,ばね,減衰要素を用いた集中系でモデル化し,各要素の値をMRI撮像等で得られる声道断面形状と口唇インパルスや音声信号から得られる周波数応答を用いて同定することで,声道壁の部位による粘弾性の違いを考慮した声道モデルの同定手法を開発することを全体構想とする.研究期間内には,軸方向に粘弾性の異なる縦続音響管や三次元声道模型を対象とし,管壁の粘弾性を組み込んだ集中系モデル化手法の開発および狭窄部や分岐部の要素形状や分割数が同定精度に与える影響の解明を行うことを目的とする. 本年度は一様な断面形状および粘弾性を持つ音響管を対象とし,音響管壁面の粘弾性の違いによる音響固有周波数の変化について実験により確認し,その結果と音響管を集中系モデル化して行ったシミュレーション結果の比較を行った. 実験はアルミニウム,アクリルおよび柔らかさの異なる2種類のシリコーンの計4種類の素材からなる内径20mm,外径60mm,長さ170mmの音響管を作製し行った.音響管開口部の片端から小型振動試験器により音響加振し,音響固有周波数を測定したところ,アルミニウムおよびアクリル製の音響管では片端開片端閉の音響管の理論値とよく一致し,実験装置の妥当性を確認した. また,シリコン製の柔らかな壁面を持つ音響管を対象とした測定では, 壁面が柔らかいほど音響固有周波数が低周波数側へ移動し,ピーク値が低減した.この現象に対し,音響管内の圧力変動により管壁面が周方向に変形したことで発生するエネルギー損失によるものとして,結合減衰で表した要素を集中系モデルに付加し,シミュレーションを行った結果,同様の現象を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は一様な断面形状および粘弾性を持つ音響管を対象とし,音響固有周波数測定装置の作製と集中系モデルを用いたシミュレーションプログラム作成を行った. 作製した実験装置は小型振動試験器を用いた音響管加振部と音響管部の2つのユニットで構成される.そのため,本年度行う予定であった,軸方向に粘弾性の異なる音響管や狭窄部を持つ音響管,また次年度以降に行う予定である母音発生時の声道を模擬した断面形状を持つ縦続音響管や分岐部を持つ音響管など条件の異なる音響管に対して実験を行う場合,音響管部の交換をするだけよく,実験の効率化を図ることができる. また,本研究では音響管断面形状や壁面粘弾性の変化を質量,ばね,減衰要素で表現した多自由度集中系モデルを用いたシミュレーションプログラムを作成している.これにより,対象とする音響管を変更する場合には,集中系を構成する各要素の値を変更するだけでよく,容易に対応可能である. 以上の本年度の成果により,今後研究を進めていくにあたり効率的な環境を構築することができている.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,より人間の声道に近づけたモデルを対象として,集中系モデル化手法の開発を行う.対象とするモデルは母音発生時の声道を模擬した断面形状を持つ縦続音響管を作製して使用する.音響管の片端を音響加振したときの入出力波形をもとに,音響管の集中系モデルを構成する各要素のパラメータ同定を行い,要素分割するときの形状や分割数が同定制度に与える影響について検討する.このとき,音響管の素材にはアクリルおよび硬度の異なるシリコーンを用い,壁面粘弾性の違いも考慮した集中系モデル化についても検討を行う. また,人の声道をモデル化するには鼻腔と口腔の分岐部のモデル化が問題になると考えられる.そこで,アクリルや硬度の異なるシリコーンを用いて分岐部を持つ音響管を作製し,上述した方法により分岐部のモデル化精度を向上させるための要素分割手法について検討する.
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