研究課題/領域番号 |
25820077
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小沼 弘幸 茨城工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (90520841)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セルフベアリングモータ / 磁気浮上 / 磁気軸受 / 人工心臓 / 遠心ポンプ |
研究実績の概要 |
小柄な患者にも埋め込み可能な高耐久な人工心臓を実現するため,磁気浮上型人工心臓の小型化,磁気支持の信頼性の向上を図る必要がある。本研究では,一つのステータで磁気浮上モータの回転と磁気支持を分離して制御できる径方向支持型の磁気浮上モータ(セルフベアリングモータ)の開発と人工心臓としてセルフベアリングモータを用いた磁気浮上遠心血液ポンプの開発を行っている。本セルフベアリングモータは,ロータの径方向の2軸と回転を能動的に制御し,軸方向と径方向軸周りの傾きはロータに設置している回転浮上用永久磁石により発生する軸方向復元力と傾き復元トルクの受動安定性で静的に磁気支持し,完全非接触な磁気浮上を実現している。小型化,磁気支持の信頼性の向上を図るための検討として,インペラに作用する力学的特性を知る必要がある。そこで,本年度は,昨年度に引き続き,これまでに開発している磁気浮上遠心血液ポンプを対象として理論的解析や磁場解析,数値流体解析を行った。また,小型化したセルフベアリングモータの設計製作を行った。 これまでに開発している磁気浮上遠心血液ポンプにおいて,磁気支持特性の異なる3種類のロータを用いた比較実験を行った。結果から負ばね力,軸方向復元力と傾き復元トルクの関係は比例関係になっていないことが分かった。径方向磁気浮上は負ばね力が小さい方が安定していた。これらの結果を踏まえて,セルフベアリングモータの能動制御力の推定式と負バネ力の推定式を用いて,小型化したセルフベアリングモータを設計製作した。今後,基本性能の評価を行い,小型磁気浮上型人工心臓の開発を行う。ポンプ部の定常流解析を行った。インペラを径方向,軸方向および傾き方向に変位させたときのポンプ吐出性能と流体力の変化を確認した。インペラが変位してもポンプ吐出性能はあまり変化しないことが分かった。今後,非定常流体解析を行い詳細に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画は次のようになっている。平成25年度~26年度前半に,(1)負バネ力,復元力および復元トルクと磁束密度との関係式,(2)能動制御軸と非制御軸の干渉の関係式,(3)インペラの浮上位置と人工心臓ポンプ内の流体力の関係式の導出を行う。関係式を導くのにあたり,磁場解析や流体解析を行う。平成26年度以降に(4)磁気浮上型人工心臓の開発・改良,(5)力学的特性と磁気浮上性能の関係の解明,(6)力学的特性を考慮した磁気浮上制御の開発を行う。 現在,(1)については確認を終えている。(2)についてはある程度目途が立ったところである。(3)については次年度非定常流体解析を行い詳細にするところである。(4)については,小型化したセルフベアリングモータの開発を終えたところであり,次年度その基本性能の評価を行い,それを用いた小型磁気浮上型人工心臓の開発を行う。(5)についてはこれまでに開発しているセルフベアリングモータを用いてある程度確認を終えている。(6)については小型磁気浮上型人工心臓を開発してから行う予定である。 以上から「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,完了していない研究を引き続き行う。(1)~(3)の各関係を検討するにあたり,磁場解析や流体解析を行う。また,小型化したセルフベアリングモータを評価するための治具の製作を行い磁気支持力などの基本性能の評価を行う。そして,(4)の小型磁気浮上型人工心臓を開発する。 開発した小型磁気浮上型人工心臓を用いて(6)の力学的特性を考慮した磁気浮上制御の開発を行い,人工心臓としてのポンプ性能の評価と磁気浮上制御系の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたセンサの購入をやめ研究室所有のセンサで代用する設計変更を行い,小型セルフベアリングモータの性能評価に用いる治具の設計が遅れたことの理由により差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に行う小型セルフベアリングモータの性能評価に用いる治具の製作費の一部に充てる。最終年度では,汎用解析ソフトのリース費用(約65万円),小型セルフベアリングモータの性能評価に用いる治具および遠心ポンプの試作の製作費(約37万円),学会発表費用(約10万円)の使用を予定している。
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