研究課題/領域番号 |
25820078
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
酒井 史敏 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80342533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | システム同定 / 非線形摩擦 / 学習制御 / 非線形要素 |
研究実績の概要 |
本研究では,非線形摩擦をもつ機械システムを対象として,試行の繰り返しにより機械システムを表現する線形モデルおよび非線形摩擦モデルのパラメータを同時に同定することを目的としている.昨年度までにクーロン摩擦モデルに基づく摩擦補償器を含めたサーボ系を対象として,射影型反復学習制御に基づく連続時間システム同定法を拡張することで,駆動速度が比較的高速である領域では摩擦係数を線形モデルと同時に推定できることを明らかにした.本年度は,実機のもつ非線形特性を詳細に検討し,提案法の有効性を明らかにすることを目的として以下の2項目について研究を進めた. (1)クーロン摩擦のみでなく静止摩擦およびストライベック効果を考慮した非線形摩擦にも対応できるように拡張を行った.具体的にはLIP(Linear-in-the-parameters)摩擦モデルを利用し,与える目標軌道によって定まる速度領域によって射影空間を切り替える方法について検討を行った. (2)提案法の有効性を検証するための送りねじ駆動機構には,サーボモータを過電流から保護するための飽和要素が設けられており,同定実験においてもその飽和要素のもつ非線形性の影響が現れ,実機により提案法の有効性を明らかにすることができなかった.そこで,送りねじ駆動機構を駆動するサーボモータの電流飽和および最大速度を規定する速度飽和を含めた位置制御系について詳細に検討し,3つのサブシステムで構成される区分的線形システムで近似できることを明らかにした. 今後は,主に実機を用いて提案手法の有効性を明らかにし,試行の繰り返しによって得られる摩擦補償器の特性について検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
送りねじ駆動機構を用いた同定実験において,低速度から高速度領域まで含む目標軌道を与えた場合に,サーボモータを過電流から保護するための飽和要素および最大回転数を規定するための飽和要素がはたらくことが確認された.そのため,送りねじ駆動機構を一つの線形システムで表現できると仮定した場合に提案手法の有効性を明らかにすることができておらず,解決すべき課題が残されている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本予算で購入した送りねじ駆動機構を用いて提案手法の有効性および同定精度について検証を行う.その際,非線形摩擦だけでなく,飽和要素も考慮する必要があり,区分的線形システムに非線形摩擦が作用するシステムの同定問題を扱う.そのため,区分的線形システムの切り替えおよび速度領域による摩擦モデルの切り替えが必要となり,それらの切り替え方法について検討を行う予定である.
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