研究課題/領域番号 |
25820082
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鮎澤 光 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 研究員 (60649086)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動力学計算 / システム同定 / 運動解析 / 運動計画 / 運動最適化 |
研究実績の概要 |
人体モデルの幾何・力学パラメータは、運動解析結果に大きな影響を与えるため、これらのパラメータの同定は重要なプロセスとなる。一般的な同定問題は、事前に計測された運動を真として、直接計測困難な静的・動的パラメータを同定・推定する。このプロセスは人体モデルの内部状態量の推定問題についても同様である。しかし近年の計測技術の発展により、観測された時系列データを真とせず、動力学シミュレーションから生成される軌道が観測データを最も再現するようなパラメータを算出することが可能になってきた。このような計算によって力学的整合性を確実に満たし精度の高い解析を実現できるが、筋骨格モデルなどの詳細な人体モデルにおいて、計算コストという障壁が非常に高い。本研究では、人型ロボットの分野における運動時系列を求める運動計画問題の計算技術を応用することで、動力学計算を伴う人のパラメータ同定・運動解析を時空間最適化問題として解く計算手法を開発する。 初年度は大規模な多リンク系の動力学計算手法の改善を行ってきた。第二年度は、人体運動の時空間最適化問題の前段階として、人型ロボットのパラメータ同定問題を時空間最適化問題として拡張して、これを解く手法を開発した。また従来のロボットの運動計画問題を人の運動解析問題と融合させた時空間最適化問題としての一般的な定式化を行い、同様にこれを解く手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第二年度は、人型ロボットのパラメータ同定問題を時空間最適化問題として拡張した。脚システム特有のベースリンクの運動方程式を用いた力学パラメータの同定法を基盤とし、モータ電流から求まる関節トルク時系列データを真とせずに、慣性パラメータに加えてアクチュエータや関節摩擦などの機械定数を同定した。また従来のロボットの運動計画問題を人の運動解析問題を融合させた時空間最適化問題としての一般的な定式化を行った。本年度では、人の動作をロボットに再現させるリターゲッティング問題を例題として、人の観測された時系列データを最も再現し、かつロボットの幾何学的・力学的整合性を満たす、被験者の幾何パラメータおよび被験者・ロボットの双方の未知運動時系を同時に求める時空間最適化問題として定式化した。特に応用例として開発されたリターゲッティング技術は、バイオメカニクスにおける人動作特徴の復元評価を同時に行うため、人の動作を忠実に再現させる用途において実用性が高く、本課題で開発してきた人型システムの時空間最適化基礎理論の有用性を示すものであり、計画以上の成果を得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、これまでに開発してきた、人型システムの動力学計算法、運動解析法、パラメータ同定法、運動計画法を融合させ、人型ロボットや筋骨格モデルなどの詳細な人体モデルを統一的に扱う時空間最適化問題を定式化して、これを解く手法を開発する。第二年度は人の運動解析技術を利用したロボットのリターゲッティング問題への応用例として、人型システムの時空間最適化理論の基礎は構築されつつある。次年度では、大規模時系列計算の高速化のため、時空間軌道の有限なパラメータ化による計算の高速化を行い、高速な動力学計算手法を融合させることで、最適化問題における勾配ベクトルの解析解の高速計算を目指す。以上の手法を応用して、ヒューマノイドロボットおよび人体モデルに対して、観測された運動時系列データから生理学・動力学的評価に基づいて運動修正・生成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
第二年度後期では、当初の計画には含まれていない人の運動解析技術を利用した人型ロボットのリターゲッティング問題への応用を行い、本課題で開発してきた人型システムの時空間最適化基礎理論の有用性を示す成果が得られた。人型ロボットのリターゲッティング問題への応用性・有用性は高いと判断されたため、人型ロボットに搭載するプログラムを高速化させるためのソフトウェア開発環境を次年度において購入を行うように計画変更を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
人型ロボットに搭載するプログラムを高速化させるためのソフトウェア開発環境の必要経費を計上する。また、国内外の研究者との討論や情報交換、及び国内外の学会にて研究成果を発表するための旅費を計上する。さらに研究成果を学術論文として発表する際に関連する費用も計上する。
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