本研究では、運動コントローラ・データベースを構築することで人間の運動遷移の仕組みを解明することを目指し、その基礎研究として人間の力学モデルにおいて力学的拘束条件を満足する状態集合(最大CPI集合)を計算する手法を確立することを目的とする。 本年度は、これまでに開発してきた「大自由度モデルにおけるコントローラを簡略化モデルにおけるコントローラに等価変換する手法」を更に押し進め、以下の2つの運動解析・制御手法を開発した。 1.人間やヒューマノイドの各関節において設計されたコントローラを、身体全体の重心を制御するコントローラへ変換する手法を開発した。重心を制御するコントローラを計算することにより、前年度までに開発した簡略化モデルに基づく最大CPI集合に基づく運動遷移制御を適用することが可能となる。当該年度では特に、本手法を筋骨格モデル等の複雑なモデルにも適用できるように基盤となるソフトウェアを整備した。 2.1の手法の応用として、簡略化モデルに基づいて設計した重心コントローラを各関節のコントローラへ適切に配分する手法を開発した。1の手法が運動の「解析(analysis)」を行うものであったのに対し、この手法は運動の「統合(synthesis)」に必要な逆問題を解くものであり、運動のコツの設計等へ応用できる成果である。本手法を応用することで、例えば、人間がある運動を行うのに必要な筋力等のパラメータを算出することも期待できる。 以上の2つの運動解析・制御手法の開発に加え、これまでに進めてきた最大CPI集合に基づいた運動遷移制御について、シミュレーション上でより多くのケーススタディを行った。
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