生命現象を解明するツールとして,単一細胞レベルで超並列(10の4乗個以上)に自動で細胞操作するシステム”iCellStation”(intelligent CellStation)の開発を目標としている.最終年度では,単一のヒト由来細胞に対する操作とデリバリーを行うシステムの開発を進めた. 単一細胞操作のために,マニピュレータアレイと誘電泳動力を用いたシステムを開発した.電極を被覆した状態にて細胞を誘電泳動力で操作すれば,電場の集中や溶液の化学反応を防ぎながら低侵襲に細胞を操作することができる.細胞操作のデバイスには,ヒト由来の細胞よりも若干大きいサイズの電極間距離を持つ平面電極を形成して,その上に誘電体の樹脂を被覆したものを用いた.交流電圧を印加すると,4x4の電極間に細胞がトラップされた.細胞を染色した蛍光色素の流出がなく,電気穿孔は発生しなかった.本原理にて,低侵襲かつ超並列に細胞を操作する道筋を明らかにした. 超並列に細胞内デリバリーを行うために,ナノニードルアレイを開発した.ニードルのパターニングには,i線ステッパーを用いた.深掘りRIEにて両面からSOI (Silicon on Insulator)ウエハのSiをエッチングした. SOIウエハの埋め込み酸化膜層にて,導入部側のパターン内でのエッチレートの差を均一化し,安定したニードルの接続を実現した.表面と裏面の接続を確実に行って,歩留まり高く段付きナノニードルアレイを作製した.溶液吐出実験にて,連通が確認できたニードルは99/100本だった.電子顕微鏡観察では,100/100本の中空ニードル構造の形成を確認した.導入部と安定した接続プロセスを開発し,ナノニードルアレイ作製プロセスを確立した.
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