研究課題/領域番号 |
25820090
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
保田 俊行 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60435451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 知能ロボット / スワームロボティクス / 計算知能 / 進化ロボティクス / 群れ挙動 |
研究概要 |
アリやハチなどの集団の振る舞いで観察される群知能をマルチロボットシステムに応用する分野はスワームロボティクス(Swarm Robotics: SR)と呼称される.比較的単純で均質な多数のロボットで群れを構成することで,頑健・柔軟,かつ,台数の変更が容易であるといった特徴を持つ.その反面,超冗長システムであるが故に,群れ挙動の生成手法,および解析手法の実現が課題であり,社会性生物がみせる特定の振る舞いを扱っているに過ぎないというのが現状と言える.本研究の目的は,このSRに基づく可塑的群知能システムの設計方法の提唱である.その実現のため,H25年度では,(i) 動物行動学で用いられる行動連鎖の概念を用いた群れ挙動の解析手法の構築,(ii) 実機ロボティックスワームとしてロボット20台の製作と動作検証実験を行った.それぞれ,詳細には以下の通りである. (i) ロボットコントローラの設計に人工進化を用いる進化ロボティクスアプローチにより獲得した群れ挙動を解析の対象とした.まず,複雑ネットワーク理論に基づいてサブグループを抽出し,そのサブグループ毎の行動の推移における関連の有無と観察頻度の評価を行った.解析を通して,タスク達成のためのサブグループ間で役割分担が実験毎に様々な形で発現していることを示せた.また,複数のベンチマーク問題に適用することで,解析手法の汎用性を確認した. (ii) 全方位カメラと測距センサを搭載し,駆動輪としてオムニホイールを持つ移動ロボットを製作した.鳥の群れのモデルであるBoidを拡張した制御器を実装して実験を行った.実験で得られた群れのまとまり具合や進行方向の一致度を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析手法の構築については予定通り進捗している.他方,実機スワームの実験では,現在のところ,当初予定していた進化ロボティクスアプローチではなく,鳥の群れのモデルを拡張した手法を開発・適用している.また,その実験では,計算機シミュレーションで観察された振る舞いとのギャップが確認された.この結果を基にロボットの改良を行うとともに,シミュレーションで得た結果のシームレスな移植手法についてのより詳細に検討する必要がある.この点に関しては,申請書には未記載の研究として,群れ挙動の獲得のために問題難度を徐々に変化させる段階的進化に取り組んでおり,人工進化の高速化のみならず振る舞いの頑健性の向上も確認できたため,このアプローチをさらに深化させることで解決が可能と考えられる.さらに,未経験な入力に対して高い頑健性を示す群れ挙動の特徴が提案している解析手法により抽出できており,この知見をロボット設計に反映するを目指す.
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今後の研究の推進方策 |
群れ挙動解析においては,スワームサイズの大規模化や問題の高難度化をし,汎用性についてさらに議論を深める予定である.また,行動の継続時間やサブグループのサイズなどを導入し,より詳細な解析を行う.さらに,それらにより得られた解析結果の可視化手法についても取り組む.実機実験については,H25年度の知見をもとに,ロボットの改良を加えるとともに,ロボット台数やフィールドサイズなどの実験規模についても入念に設計する.そして,実機ロボティックスワーム向けの人工進化手法の実現を目指したい.
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