研究課題
若手研究(B)
本研究は(1)未知環境の電波状況及び環境形状のリアルタイム推定技術の研究、(2)ベイズ推定を用いた過去及び未来の電波状況の推定技術の研究、(3)推定結果のマッピング技術の研究などからなる。(1)について工学院大学16階を測定環境として、北陽電機社製UTM-30LXを利用して、10箇所程度で壁面等までの距離を測定し、これをICP手法により繋げ二次元点群データを作成、さらにこれを適切にグループ化と線分化し、二次元平面の線分データを作成した。またこの地図は、一度に全体を得ることは出来ず、ロボットの進行に伴い刻々と生成されることを想定しているため、部分的な未完成データを用いて電波シミュレーションを行ない、全体地図との比較を行なった。結果として、部分的な地図であってもロボット周囲の電波状況推定については実用上の問題点は少ないことが明らかとなった。次に、この推定結果を検証するために、実測値と比較した。結果として、送信源に近い箇所では良好な推定結果を得ており、送信源から遠い箇所では推定値の方が電界強度が高い傾向を得た。推定では壁等の材質をコンクリートと仮定しているが、実際には鉄筋が入っており、この材質の違いが結果の違いではないかと考察している。このため(2)の材質推定について、当初カメラ等を用いる予定であったが、シミュレーション結果と実測値の差分から逆計算して材質推定を行なう方法を考え、その実証的足がかりを得られた。(3)の推定結果のマッピングについては、シミュレーションソフトの機能を用いて可視化を行なったが、単位系が実測値と異なるため、この変換を行ない、より運用上便利な可視化情報を作成することが出来た。また追加研究として、本研究手法を応用し火山調査ロボットのための電波推定を試みた。結果2km四方の広範囲においても本研究が応用可能であることを確認した。この屋外での電波推定については来年度以降は別の研究として独立させる。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)電波シミュレーションのための二次元平面地図の自動生成については概ね想定通り進行出来ている。地図にはまだ誤差があり、来年度に改善させる。また推定値と実測値の比較については良好な結果を得ている。(2)ベイズ推定を用いた過去及び未来の電波状況の推定技術の研究については今年度の研究予定ではないが、推定値と実測値との差分が材質推定に還元出来る可能性を得ており、来年度以降の研究の進展への足がかりとなった。(3)の可視化についても推定値、実測値共に、ヒートマップとして可視化出来ており、今後より細かな情報を載せることによりよりリッチな情報提示が行えることが期待出来る。以上のように当初の計画は概ね推定通り進展していると言える。さらに、本研究の結果を応用し、当初想定していなかった広範囲の屋外にも利用できる可能性を得たことは重要な知見である。本研究は屋内未知環境の調査を対象にしていたが、火山探査や橋梁などの調査では飛行ロボットによる広範囲な行動が求められており、ここでもまた無線通信は重要な要素技術である。この屋外広範囲の研究については、類似技術を使うものの本研究とは異なる前提(地形が既知かつ広範囲である、地形に平面が少ない、ロボットが三次元的に行動する、電波状況推定に時間領域差分法ではなく光線追跡法を用いる等)であるため、来年度以降は本研究とは切り離し、別研究として進めていく予定である。
(1)電波シミュレーションのための二次元平面地図の自動生成については、地図にはまだ誤差があり、平行な二平面が平行でない、実際にはない穴が生成される、等の問題点が明らかとなっている。この問題については短い線分の誤差が大きいことから、線分の長さで誤差を精査する工夫を行なう。またこの地図生成は未だ全自動ではないため、ロボットに搭載させ自律的に地図作成が可能とする。また、二次元地図のみならず、三次元の地図を用いてシミュレーションを行なうことでより電界強度の推定精度を向上させることが出来るため、来年度は電波推定に適した三次元形状地図の生成についても研究を始める予定である。準備研究の結果から、販売されている三次元センサで地図データを作成する場合、センサの測定範囲の狭さから上手くデータ合成が出来ない問題が明らかとなっているため、複数台の三次元センサの利用、または三次元センサと二次元センサの併用などの手法を新たに研究する。(2)ベイズ推定を用いた過去及び未来の電波状況の推定技術の研究については、今年度研究において、推定値と実測値との差分が材質推定に還元出来る可能性を得ているため、これをベイズ推定の枠組みに当てはめ、地図データの材質を動的に変更することで実測値とのすりあわせを行なうシステムの開発を行なう。(3)の可視化については、二次元については推定値、実測値共に、ヒートマップとして可視化出来ているが、三次元形状地図及び電波状況推定を導入するに伴い、その表現方法について考察を行なう。
実証実験において参加メンバーが予定よりも減ったため多少の残額が発生した。来年度の実証実験予算に充てる。
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