研究課題/領域番号 |
25820091
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
羽田 靖史 工学院大学, 工学部, 准教授 (70455450)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遠隔操縦 / 電波伝搬 / FDTD法 / SLAM / レスキューロボット / ベイズ推定 / 電波の可視化 / 災害対応 |
研究実績の概要 |
本研究は(1)未知環境の電波状況及び環境形状のリアルタイム推定技術の研究、(2)ベイズ推定を用いた過去および未来の電波状況の推定技術の研究、(3)推定結果のマッピング技術の研究などからなる。(1)について昨年度までに環境の二次元形状の測定、点群データの作成、グループ化と線分化、などができていたが、今年度はグループ化と線分化の高精度化を行い、環境との計測誤差を約3cmにまで小さくした。本研究で要求される計測誤差は電波長の十分の一(430MHzの電波利用時で約7cm)としていたため、線分化精度については充分とすることができた。現在は複数回の測定データを合成し、環境情報をより大きく作成する技術を開発中である。また今年度は新たに環境の三次元計測に取り組み、新しい計測システムを完成させ、三次元点群形状を測定した後にこれを面データ化することを実現した。三次元地図の精度はまだ荒く電波伝搬シミュレーションを行うには至っていない。電波状況の推定については、昨年度までの誤差の原因が、床や天井の素材をもとにした、三次元と二次元の換算式にあることを突き止め、全反射していた上下方向を全透過として、結果実測値と計測値の誤差をさらに小さくする事が出来た。また障害物が電波状況に与える影響について調査し、例えロボットが通過できる障害があったとしても電波状況悪化のためロボットが遭難する可能性について論じた。(2)のベイズ推定については考察を行っている段階である。(3)のマッピングについては、より一般的な電界強度値への変換式を用いて求めた電界強度のヒートマップを形状地図に重ね合わせ、より理解しやすくした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)未知環境の電波状況及び環境形状のリアルタイム推定技術の研究については、二次元地図については概ね順調に推移している。三次元地図については非常に興味深い結果が出ているが、想定よりも地図のオクルージョン(隠れ欠損)や点群の平面化が難しく、来年度も継続して研究する必要がある。(2)のベイズ推定を用いた過去および未来の電波状況の推定技術の研究については、ロボットによる電波計測により、過去に計測した物体の不明情報を推定するための枠組みを検討し、多用な不明情報の中でも材質の推定に特化する方針を決めた。(3)の可視化については順調に推移しており、画面表示の自動化を来年度実行すれば完成する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)未知環境の電波状況及び環境形状のリアルタイム推定技術の研究については、複数回の測定データを合成し、環境情報をより大きく作成する技術を開発する。これによって1回の測定で計測できない入り組んだ個所の隠れ欠損を補完することができ、より広い環境に本研究を適応することができる。また、三次元地図の作成に関しては、計測精度の向上、ノイズの除去、欠損処理、合成など課題が多く、電波伝搬シミュレーションができる環境の計測方法を研究・実装していく。電波状況の推定については、現在行っている工学院大学16階ラウンジのみならず、他の環境に適応可能か実験を行う。(2)のベイズ推定を用いた過去および未来の電波状況の推定技術の研究については、材質の推定、厚みの推定等について、仮置きした値を修正する枠組みを検討する。材質については、素材単体が存在する空間において鉄筋コンクリート、鉄筋なしコンクリート(モルタル)、空洞等の誘電率の違いが分かるようにする。(3)のマッピングについては、開発した各技術をシステム化し、遠隔操縦時に可視化された推定電波状況を閲覧することを可能とする。ただし現在は計算量の問題から推定と可視化に数分~数十分要するため、計算量の削減方法について検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
都合により学会発表を1件キャンセルしたため残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の実証実験予算に充てる。
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