研究課題/領域番号 |
25820098
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 優一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60551918)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 電磁環境 / コネクタ / 接触不良 / 伝送線路 / 電気接点 / 相互接続 / 電磁情報セキュリティ / サイドチャネル攻撃 |
研究概要 |
平成25年度は、交付申請書の各項目に対応して以下の2項目について研究を行った。 1.緩みを有するコネクタ接触境界面の等価回路網の推定: 等価回路網を構成する高周波素子を推定するために、パルスジェネレータとオシロスコープを用いてTime Domain. Reflectmetry(TDR)測定装置を構築した。高周波寄生素子は、測定対象となるコネクタの接触力のみを変化させ、TDR法を用いて、緩みが生ずる前後の反射波形の差分を計測することにより推定した。接触力はトルク調整が可能なトルクレンチを用いて制御し、伝送信号損失が0.1 dB以下となる範囲で緩みを発生させた。得られた寄生素子を用いて等価回路網を推定し、SPICEシミュレーターを用いて推定回路の時間応答を観測し妥当性を評価した。 2.汎用的なコネクタ緩みモデルの構築及び電磁環境劣化予測手法の開発: 緩みが生じた際の接触境界表面の状態は物理的に観測することが難しいことから、TDR法により得られた応答と、時間領域差分(FDTD)法を用いた接触境界表面の接触状態を模擬したシミュレーションモデルの時間応答を比較し、トモグラフィー的手法をとりながら、緩みに寄与する物理パラメタを特定した。シミュレーションで用いたモデルは我々の研究グループがこれまでに提案を行ってきたCATV同軸コネクタの接触不良モデルを拡張して用いた。また、FDTD法を実行するシミュレーションプログラムはこれまで我々の研究グループが既存設備であるベクトル型 スーパーコンピュータ SX-9向けに開発したプログラムを改良したものを使用した。得られた結果から、上記1.で得られた等価回路網とコネクタの接触状態を表す物理パラメタ(接触点の分布、接触点の点数、接触抵抗値)の関係を明らかにした。さらに、上記で得られた関係と接触工学の知見を基に汎用的なコネクタに適用可能なモデルを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請に掲げた25年度の研究計画の項目について、その全てを達成すると共に、雑音放射を予測する手法を開発する過程で、電磁界の相反性から、雑音放射の問題を逆符号の問題である妨害の問題に置き換えることでイミュニティ評価も可能とし、計画を大幅に越える成果を得た。さらに26年度に計画されていたコネクタに緩みの生じた情報機器からの情報漏えいリスク評価についても基礎的な検討を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、コネクタに緩みの生じた情報機器からの情報漏えいリスク評価を機器の暗号処理時に放射される電磁波を用いて行う。また、これと並行して、汎用的な緩みモデルを用いて、コネクタの緩みにより引き起こされる電磁波伝搬の乱れについて、時間領域差分法を用いたシミュレーションにより解析し、電磁界伝搬を可視化することで電磁環境劣化のメカニズムを解明する。得られた結果を基に高周波数帯における良好な電磁環境確保のためにコネクタに求められる接触性能要件を与える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験装置を工夫することで予定個数より少ない数のコネクタで今年度の計画を達成できたため、残額が生じた。 本年度生じた残金は、次年度計画している「電磁環境確保のためにコネクタに求められる接触性能要件」を与えるために用いるコネクタを購入する費用に充て、当初の計画よりも精度の高い接触性能要件の提示を目指す。
|