研究課題/領域番号 |
25820104
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高 炎輝 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40586286)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気機器工学 / シミュレーション工学 / 方向性電磁鋼板 / 可飽和リアクトル / 鉄損 / 積層鉄芯 |
研究概要 |
本研究の目的は,無方向性積層鉄芯の層間ギャップと鋼板中の渦電流を考慮した鉄損解析法を方向性積層鉄芯用に拡張するとともに,鉄損増加が問題となるバルブ型可飽和リアクトル(VMCR)に適用し,その鉄損をバルブが無い従来の可飽和リアクトル(MCR)と同程度まで低減することである. 本年度は,積層鉄芯の層間ギャップを考慮した鉄損解析法を,磁界解析部および鉄損計算部の両方において,方向性電磁鋼板の任意方向の磁気特性が考慮できるように改良した.磁界解析部では,積層鉄芯を塊状鉄芯モデルで均質化し,塊状鉄芯モデルで得られた磁束分布から鋼板中の磁束分布を求め,実測で得られた任意方向の磁気特性より鋼板の透磁率を更新し,さらに塊状鉄芯の均質化された透磁率を求めながら非線形反復を行う磁界解析法を開発した.また,鉄損計算部においても,実測で得られた任意方向の鉄損曲線を用いて鉄損を算出できるようにした.開発した鉄損解析法を,方向性積層鉄芯で構成された簡易な単層VMCRモデルに適用した.その結果,VMCRの鉄損の増加要因は,バルブに集中した磁束が,積層間のギャップ及び磁気特性の異方性のため,積層鉄芯中でも均一にならないためであることを明らかにした.また,鉄損を低減するため,バルブを鉄芯中央に一つ配置する従来構造から複数の短冊状に改良することにより鉄損を従来型より32%低減できることをシミュレーションにより明らかにした.さらに,本鉄損低減法を三相VMCRに適用したところ鉄芯のT接合において磁束の偏りが生じ,この接合部でも鉄損が増加していることが判明したため,T接合部の構造を検討し,この部分に圧延方向が90度異なる方向性電磁鋼板を交互に重ねる鉄芯構造を用いることが良いことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は,方向性電磁鋼板を用いた積層鉄芯の層間ギャップと鋼板中の渦電流を考慮した鉄損解析法を開発するとともに,簡易な単相バルブ型可飽和リアクトル(VMCR)モデルを用いて検証実験を行うことにより,解析手法の妥当性を検討することであった. 鉄損解析法の開発に関しては,鉄損解析法を,磁界解析部および鉄損計算部の両方において,方向性電磁鋼板の任意方向の磁気特性が考慮できるように改良したが,鋼板中の渦電流まで考慮した解析法まで開発できなかった.解析手法の検証に関しては,開発した鉄損解析法をVMCRモデルの鉄損解析に適用し,鉄損の増加要因を明らかにし,鉄損低減法まで明らかにできた.しかしながら,三相鉄芯のT接合部で鉄損が増加することが判明し,この接合部の鉄損低減法も明らかにできたが,その検討のため,VMCRの試作と鉄損測定ができなかった.従って,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度が研究最終年度であるため,今年度開発した層間ギャップを考慮した方向性積層鉄芯の鉄損解析法を鋼板中の渦電流まで考慮できる方法に改良する.また,本年度試作できなかったバルブ型可飽和リアクトルモデルを完成させ,鉄損を測定し,開発した鉄損解析法の妥当性を検証するとともに,従来型単相バルブ型可飽和リアクトルと比較する.
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次年度の研究費の使用計画 |
解析法検証用可飽和リアクトルを試作できなかったため. 本年度試作予定であった従来型可飽和リアクトルと次年度試作予定であった改良型可飽和リアクトルを本年度と次年度に請求した助成金により製作する.
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