研究課題
若手研究(B)
本研究は、帯電した人体がパソコンなどの電子機器から遠ざかることで起こる電子機器の誤動作の問題を定量的に解決し、誤動作の起こりにくい信頼性の高い電子機器の設計に指針を与えることを目的としている。平成25年度の研究は、帯電した物体を電子機器を模した金属筐体から遠ざけたときに金属筐体に生じる誘導電圧を明らかにすることを目的として次の通りに実施した。一般に帯電した物体の近くの導体に生じる誘導電圧は、各導体間の静電容量の比で求められる。しかし、帯電した物体を金属筐体に近づけたときに金属筐体の電荷を放電させ、その後帯電した物体を金属筐体から遠ざけると、金属筐体は帯電した物体の電圧の極性とは逆極性の電圧に帯電する。このように帯電した物体を金属筐体から遠ざけたときに金属筐体に生じる誘導電圧は、各導体間の静電容量を測定し、キャパシタンスモデルを用いて数値計算しただけでは明らかできない。本研究では帯電電位測定器を用いた誘導電圧の測定と、q=cv則から、金属筐体に生じる誘導電圧を測定と数値計算で明らかにした。本研究の結果、0.7 kVの帯電物体を金属筐体から遠ざけたとき、金属筐体に生じる誘導電圧は最大で-2.3 kVになることを明らかにした。本実験条件では、金属筐体に生じる誘導電圧は、帯電物体の電圧の約-3倍になることを明らかにした。このように予想された結果よりも相当大きな逆極性の誘導電圧が金属筐体に生じる可能性があるため、電子機器の誤動作が容易に発生する可能性があるといえる。本研究の成果は、帯電物体の移動が原因で発生する電子機器の故障や誤動作を検討する新しい試験法の検討と、電子機器設計の基礎として役立つと思われる。今後の研究では、恒温恒室槽を用いて周囲環境(温度と相対湿度)と金属筐体に生じる誘導電圧の関係を詳細に検討したい。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りに実施されている。
平成26年度の研究は、平成25年度の研究成果に基づいて、帯電した物体を金属筐体から遠ざけたときに“金属筐体内に生じる誘導電圧”を明らかにする。本研究成果から金属筐体内に生じる誘導電圧の式を求め、電子機器の誤動作を防止できる機器設計に指針を与えることを目的として実施する。本実験では、金属筐体内に生じる誘導電圧を測定するために、申請者らがこれまでに提案してきた高電圧の分野で電圧測定に使用される球ギャップ(二つの球電極間からなる電圧測定器)と電磁波センサを用いた非接触型誘導電圧測定器を使用して以下の実験・数値計算を行う。(1) 金属筐体内に生じる誘導電圧を非接触型誘導電圧測定法を用いて測定。(2) 各導体間の静電容量を静電容量測定器を用いて測定。(3) 金属筐体内の導体の電荷量を測定。(4) 測定した静電容量と電荷量を用いて、金属筐体内の導体に生じる誘導電圧の数値計算。
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